研究課題/領域番号 |
21K20040
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
守田 まどか 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40896304)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 街区 / イスタンブル / オスマン帝国 / シャリーア法廷台帳 / 非ムスリム / 地縁 |
研究実績の概要 |
本研究は、宗教・民族・社会的に多様な住民を内包したオスマン帝都イスタンブルの「マハッレ」を対象とし、近代移行期における人々の結合関係の変容を明らかにすることを目的としている。オスマン帝国期イスタンブルにおいて「マハッレ」とは、宗教・宗派別に形成される共同体であり、かつ都市行政の末端組織としても機能したと概説的に理解されている。日本語では「街区」という訳語が定着している。しかし、各時代のイスタンブルを構成したマハッレの数や特徴、各マハッレの空間的広がりや構成員といった基本構造についてもいまだ不明な点が多い。 こうした研究状況を踏まえ、本研究では昨年度に引き続き、オスマン文書史料に現れるマハッレの個々の事例の収集と分析に努めた。イスタンブルの司法・民政を担っていたシャリーア法廷の記録簿に記されたさまざまな文書の写し(勅令、上申書、証書、嘆願書など)を分析することで、具体的には以下の点を実証的に明らかにすることができた。 (1)「マハッレ」は文書の種類や文脈によって多義的である。(2)中央政府と都市住民によるマハッレの認識は必ずしも一致しない。(3)キリスト教徒が自らの教区を「マハッレ」と表現する場合もある。(4)しかし、都市の秩序維持や移住者の管理が重要性を増した18世紀においては、イマーム(モスクの導師)に代表されるムスリムのマハッレがより重要な役割を担った。(5)こうした複雑な実態は、非ムスリムのマハッレとムスリムのマハッレの階層構造として、しばしば史料に現れる。 さらに、今年度は18世紀に都市化が進行していた城壁外にも考察対象を広げることができた。 次年度は、18世紀末から19世紀初頭にかけてのマハッレの事例を収集・分析するとともに、城壁内外の連動性や、これまで注目してきた城壁内の特殊性について、考察を深めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史料調査に出かけたイスタンブルで新型コロナウィルスに感染し、当初予定していた調査の一部を今年度中に遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは収集済みの史料の精読と分析、論文の執筆を進め、次年度のできる限り早い時期にイスタンブルで史料調査を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年6月ギリシア・テッサロニキ開催の国際会議で研究報告を行う予定だったが、体調の理由により渡航がかなわず参加を辞退したため、次年度使用額が生じた。この額は、2023年度における海外での調査に充てたいと考えている。
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