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2021 年度 実施状況報告書

後鳥羽院政期の院御所を基軸とした平安京と近郊の政治空間に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K20042
研究機関大阪大学

研究代表者

豊田 裕章  大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (00880262)

研究期間 (年度) 2021-08-30 – 2023-03-31
キーワード水無瀬離宮 / 平清盛の別荘都市福原 / 大倉御所を中心とする初期鎌倉 / 宋代の製茶、喫茶法 / 中世都市 / 平安京 / 高陽院 / 平安・鎌倉時代の庭園や建築物
研究実績の概要

本研究では、後鳥羽院政期の平安京と近郊全体について、そこに多数存在した後鳥羽上皇の院御所における、後鳥羽上皇を中心とする広義の政治的活動を明らかにするとともに、これに関わる天皇や他の政治的主体の動きを視野に入れて、空間論的に、さらに比較史的に明らかにすることを目的とする。令和3年度は、後鳥羽上皇が離宮を営みこよなく愛好した水無瀬を、より明確に中世都市史の中に位置づけるための比較史的な考察を中心に研究活動を行った。
後鳥羽上皇が離宮を営んだ水無瀬地域について、平清盛の別荘都市であった段階での福原や、源頼朝・頼家・実朝という源氏将軍の時期の大倉御所を中心とする段階の鎌倉との都市構造や選地設計思想に関する比較を行うため、文献調査、現地調査、研究者との意見交換を進めた。その研究成果を、「日本中世初期の都市構造と気脈や地勢を重視する風水思想との関わり―平清盛の福原・源氏将軍の大倉御所・後鳥羽院の水無瀬離宮―」という論文にまとめた(同論文を収載していただいた論集が本年刊行予定である)。
また、後鳥羽院政期の対外関係や文化活動として喫茶を取り上げ、宋代の茶書や随筆類などの文献調査を行い、さらに京都府茶業研究所を訪ねて意見交換を行うとともに、安土城考古博物館などで実験を行わせていただき、後鳥羽院政期の製茶・喫茶について宋の製茶・喫茶法との比較史的考察を進めた。
後鳥羽院政期の平安京についても文献からの調査を継続して進めている。また後鳥羽院政期の院御所などの庭園や建物を推定復元するための参考として、兵主大社庭園、御上神社本宮拝殿などの、現存する平安・鎌倉時代の庭園や建築物に関する現地調査も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は、下記のような点を理由として、おおむね順調に進展していると考える。
中世都市の比較史的考察においては、後鳥羽上皇の離宮の置かれた水無瀬と、平清盛の別荘都市であった段階での福原、源頼朝・頼家・実朝という源氏将軍の時期の大倉御所を中心とする初期鎌倉という中世都市との都市構造や選地設計思想の比較史的考察を行った。そのため、福原、鎌倉に関して、文献調査、現地調査、研究者との意見交換を進めて、「日本中世初期の都市構造と気脈や地勢を重視する風水思想との関わり―平清盛の福原・源氏将軍の大倉御所・後鳥羽院の水無瀬離宮―」という論文にまとめた(この論文を収載していただいた論集が本年刊行予定である)。また、後鳥羽院政期の対外関係や文化活動に関して喫茶の問題を取り上げ、宋代の茶書や随筆類などの文献調査、京都府茶業研究所を訪ねて意見交換を行うとともに実験をさらに行い研究を進めることができた
後鳥羽上皇の 高陽院の特殊な構造や、鎌倉大倉御所の侍所の建物が水無瀬離宮の長廊と同様に長舎状建築であると推定する私見について、さらに文献史料の調査や現地調査を進め、後鳥羽院政の特質に関する考察を含めて現時点での研究成果をまとめ、国際日本文化研究センターの「貴族とは何か、武士とは何か」の研究会で口頭発表を行わせていただくことができた。
現在、後鳥羽院政期の平安京についても文献調査ならびに地図製作を進めている。また本研究では研究成果を社会に広く還元することを重視しているが、令和三年度に行われた「けまり講演とみなせ野散策」の現地見学会ならびに講演で、水無瀬離宮に関する研究成果について述べ、研究成果を社会に還元することができた。

今後の研究の推進方策

今後は、次のような諸点を推進方策として考えている。
後鳥羽上皇が平安京と近郊に有した多数の院御所での文化的な活動なども含めた広義の政治的営みがどのように行われていたのか、またそれが天皇、皇族、女院、摂関家、有力近臣、寺社などの具体的な動きや相互関係とどう関わるかについて、当時の日記類などの文献史料から日単位の詳細な調査を進め、それらの動きの政治的背景を解明する。後鳥羽上皇が京内外に多数所有した院御所だけでなく、女院御所、皇族の御所、摂関家の邸第や山荘、有力近臣の邸第も含めて、それらの位置や構造について文献史料だけでなく考古学的な調査成果も参照して再検討を行い、これまで明かでなかったものも含めて解明して後鳥羽院政期の平安京と近郊の構造を推定復元した地図を作成する。
水無瀬離宮に関して、これまでの発掘調査成果を、GIS等の地理情報システムを活用して、コンピューター上で可視化した図を作成する。これを活用して、後鳥羽上皇の水無瀬離宮のより精細な推定復元図を制作したいと考えている。また水無瀬について、昨年度に検討を行った福原や鎌倉だけでなく、諸国の国府などの中世都市との比較も行いたい。
古代以来の日本の宮室や都に関するこれまでの申請者の研究をふまえて、後鳥羽院政期の平安京と近郊の構造を、日本の宮室や都の変遷過程に位置づける。また中国の宮室、離宮や都との比較、とりわけ同時代性が高く太上皇帝の政治的影響力が強かった南宋の都である臨安との政治空間論をふまえた比較史的考察を行う。
今後の研究においては、後鳥羽院政期の対外関係も重視したい。また研究成果に関する図版やわかりやすいイラストを多数作成するとともに、ホームページの開設、講演を行い、社会に広く研究成果を還元することを考えたい。

次年度使用額が生じた理由

研究活動スタート支援科研は10月より開始されたものであることもあり、令和3年度は実質6ヶ月の研究活動であるため、「当該年度の所要額-実支出額」が0より大きな金額となった。
翌年度は、当該助成金とともに翌年度分として請求した助成金を合わせた使用計画としては、GISのような地理情報システムを用いた地図の作成やホームページ作成なども行うつもりである。また調査や意見交換のための出張も多く行う予定を考えている。また図版作成も多数考えている

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 後鳥羽上皇の水無瀬離宮(水無瀬殿)の構造についてー離宮以後の問題も含めて2022

    • 著者名/発表者名
      豊田裕章
    • 学会等名
      都城制研究会
  • [学会発表] 院御所高陽院の禁中包摂と水無瀬殿の長廊に見る後鳥羽院政の特質2021

    • 著者名/発表者名
      豊田裕章
    • 学会等名
      国際日本文化研究センター共同研究会「貴族とは何か、 武士とは何か」
  • [図書] 吉村美香編『巫・占の異相ー東アジアにおける巫・占術の多角的研究』2022

    • 著者名/発表者名
      豊田裕章「日本中世初期の都市構造と気脈や地勢を重視する風水思想との関わり ―平清盛の福原・源氏将軍の大倉御所・後鳥羽院の水無瀬離宮―」
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      志学社

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公開日: 2022-12-28  

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