従来の五代十国史研究では、中原皇帝と十国皇帝との間での修好は成立し得ないという見方があたかも「歴史的事実」であるかのように語られ、ほぼ定説と化していた。この理論は、基本的に中原政権の立場にたった編纂史料の記述を軸に組み立てられてきた。これに対し本研究は、主に十国政権の立場にたった野史などに収録された国書を発見して読解し、従来認識されていた「歴史的事実」の根本的な誤りを指摘した点で、学術的に大きな意義がある。また、本研究の過程で、当時の国際関係をより詳細に分析できる外交関連文書がかなり多く存在することも分かった。今後は本研究の成果を基盤に、より具体的な五代十国史像を描き出せると期待される。
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