研究課題
本研究は、19世紀後半の日仏関係の推移を、①仏学会(1886年設立)や日仏協会(1900年設立、1909年に仏学会と合併)といった学協会を基盤とした日仏間の人的ネットワーク、②フランスの対アジア外交、③日英関係(1872年に設立された日本アジア協会)との比較、という三つの視座から検討する。以上の分析を通じ、日仏の外交関係が希薄化した明治期の1880年代から再び緊密性を増す大正期の1920年代にかけていかなる日仏関係の推移があったのか、その実態を多角的に解明していくことを目的とする。2021年度は、上記の研究課題「①仏学会(1886年設立)や日仏協会(1900年設立、1909年に仏学会と合併)といった学協会を基盤とした日仏間の人的ネットワーク」を対象とした資料調査と研究成果の発表を行った。2021年11月に、仏学会および日仏協会の成立とその構成メンバーの活動についてまとめた論文がフランス国立極東学院から論集として刊行された。また同年12月には、明治期の日仏間の外交および産業の交流に主要な役割を果たした鮫島尚信と前田正名を対象に、鹿児島県歴史・美術センター黎明館において資料調査を行った。また上記の研究課題「②フランスの対アジア外交」に関しては、先行研究を整理し、本研究が対象とする学協会と関連する事項について検討した。最後に「③日英関係(1872年に設立された日本アジア協会)との比較」に関しては、日本アジア協会の活動を先行研究で整理し、同協会が公刊した英文の学術雑誌の読解を開始した。
3: やや遅れている
本研究が対象とする日仏の学協会(仏学会、日仏協会)については、基本資料を整理し、その成立の経緯および構成メンバーの活動について論集に発表することができた。この研究を通じ、新たな課題として、関東のみならず、関西(主に神戸フランス総領事館)における人的ネットワークの形成を分析することが明治から大正期への日仏関係の推移の解明に不可欠であることが分かった。神戸フランス総領事館を対象とした日仏の外交史料については、国内のみならず、フランス(外務省文書館等)において資料調査が必要となる。2022年度は、本研究が視座とする「②フランスの対アジア外交」における日本の位置づけの検討もあわせて、分析を進める。
2022年度は、日仏の学協会(仏学会、日仏協会)の活動に加え、日仏会館および関西日仏学館の設立の経緯、また関東に加え、神戸フランス総領事館を中心とした関西における日仏の人的ネットワークの形成について調査する。関連資料については、国内(外交史料館等)およびフランス(外務省文書館等)において資料調査を実施する。以上を通じ、日仏が接近する1907年日仏協約の締結およびそれ以後の日仏交流の促進に、日仏の学協会およびその構成員が果たした役割を検討する。また日仏関係を日英関係と比較検討するため、日本アジア協会の公刊雑誌を中心に読解を進め、同協会の活動を整理する。
次年度使用額が生じた理由は、2021年度の出張数が制限されたことによる。新型コロナウィルス感染症のまん延防止等重点措置にともない、国内の研究機関等への出張および図書館での資料調査が制限された。2022年度は、2021年度に実施できなかった国内出張・フランス出張の費用として使用する計画である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
D'un empire, l'autre : premieres rencontres entre la France et le Japon au XIXe siecle (Lachaud, Francois, Nogueira Ramos, Martin ed.)
巻: 33 ページ: 247-273