研究課題/領域番号 |
21K20051
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
袁 甲幸 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (10905871)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 褒賞制度 / 在来産業 / 名望家 / 地方自治 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の通り。 【1、制度史の整理】公益貢献者を対象とする褒賞制度の法規定の変遷過程を整理した。それにより、同制度の変化が時々の国家的な課題と密接な関係を有していたことが明らかになり、また、従来の研究ではあまり注目されてこなかった農商務省の主体性も浮かびあがった。 【2、統計データの作成】1945年までの褒章受章者のうち、藍綬褒章の「公衆ノ利益ヲ興シ成績著明ナル者」枠、同「公同ノ事務二誠実勤勉し其労効顕著ナル者」枠、緑綬褒章の「実業二精励ッ衆民ノ模範タル者」枠において受章された約2000人の氏名、住所、受章日、生年月日、職種、経歴などを含むデータベースを作成し、さまざまな統計的な分析を行った。このような作業を通して、具体的にどのような人びとが「公益」貢献者として褒賞されたかが分かるようになり、その時期/分野/地域/業種の傾向が重要な意味を持つ。 【3、史料収集】今後さらなる研究のために、地方(宮城、茨城、静岡、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、岡山、山口、福岡、熊本、大分)の公文書館・図書館に赴き、褒賞関係の行政簿冊、受章者の個人関係資料を収集した。公文書館では、地方に保存されている例規集から、制度が具体的にどのように運用されたかが判明し、また、推薦・銓衡の過程が分かる書類を多く発掘できた。図書館では、受章前後の経緯が分かる個人文書や、褒賞をめぐる周囲の感想などを収集することができた。 以上の研究成果の一部は、2022年度の学会報告・論文掲載となる予定。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、上記【1】【2】を完成し、論文化する予定だった。ただし、制度変化および統計の結果を裏づける地方でしかない史料が必要であったが、コロナ流行下、勤務先の出張制限により地方での調査がなかなかできなかった。春休み中ようやく十分な調査ができ、予定通りの成果を得たものの、投稿は次年度以降になった。 ただし、計画より多くの地方の調査ができて、予想以外の事実も分かるようになったため、次年度の研究を遂行するうえで重要な手掛かりを得ている。 そのため全体的には、順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
計画では、今後の課題は以下の二つである。 【課題② 受賞者選定のプロセス】こちらについては、すでに地方の公文書から、選定の手順や重視されていた点を一部把握できたが、もう少し広く調査して、結論をより精確なものにしたい。具体的には、公文書の所蔵量が豊富な秋田県、岩手県、福島県、鳥取県、島根県、埼玉県、群馬県に調査する予定である。 【課題③ 褒賞に関する社会的な反響】当初はメディアでの報道を考察する予定だったが、これまでの調査で、時期にもよるが、すべてのケースが大々的に報道されたわけではないことが判明した。その代わりに、受章者の伝記資料には、受章当時の状況を窺える記述が多く、今後は主に伝記資料を中心に研究を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況で述べたように、地方での調査の時期が遅れ、主な調査は、所属先の年度会計〆切のあとの2月下旬~3月になったため、その時に各所蔵先に依頼した資料の複写の請求を次年度にするようにお願いをし、また受章者関係の図書・資料も、所在・書籍データを確認しただけで、購入は次年度送りにした。そのため、特に物品費の方で余剰が生じてしまった。 他方、計画よりも広範囲な調査が必要なことが分かり、予定よりも多くの金額を旅費に使用した。
|