本研究では、国家と地域社会の結びつけ方を考察する新たな方法として、これまであまり注目されてこなかった民間人を対象とする国家褒賞制度を取り上げ、とりわけ、その中核にあたる褒章条例を考察の対象とした。具体的には、①褒章条例の制定・改正の具体的な政治過程の解明、②褒章推薦・銓衡の行政的な手順の把握、③戦前の褒章受章者のデータベースの作成を通して、どの時期どのような人々が国家褒賞の対象になったかを検証した。本研究を通して、近代日本の国家褒賞は、国家や社会の課題に敏感に対応していたこと、そして、大正中期まで、明確な地理範囲を持つ地域社会への貢献が推薦・銓衡の重要な根拠になっていたことが明らかにされた。
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