研究課題/領域番号 |
21K20056
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
堀 大介 佛教大学, 歴史学部, 教授 (00913641)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 継体大王 / 古墳 / 有力墓系列 / 制度史 / 人制 |
研究実績の概要 |
1 継体大王に関する図書と関係論文を収集し、令和3年度には7割程度を終えた。関連する文献の目録を作成したうえで、①戦前からの主要な学説、②出自・系譜、③即位事情、④政治体制・政治拠点、⑤人制・部民制、ミヤケ制、国造制などの制度史、⑥墓、⑦継体関連氏族、⑧近年の動向の8つに大別し、テーマ別の要旨データベースを進めている。 2 福井県越前町の番城谷山5号墳の被葬者像を考えるなかで、越前地域全体の古墳群について、墳丘規模・墳形、築造時期、埋葬施設、立地、有力墓系列の観点から多面的に検討し、従来の見解に対する大幅な見直しを行った。特に、越前の大規模古墳にみられる墳形・規格・規模の継承的なあり方、円筒埴輪の在地技法の継続性、埋葬施設である舟形石棺の連続する型式変化を明確化し、越前における政治体制の独自性を指摘した。併せて、即位前の継体の政治拠点に近い横山古墳群の現地踏査を実施し、有力墓系列に関して従来の見解を再検討した。なかでも、主要な前方後円墳と隣接する陪塚的位置づけの小規模方墳というセット関係が、同時期の重層的に存在し、かつ累世的に認められることを明らかにした。 3 5から6世紀にかけての制度史を考えるうえで、部民制の前提となる人制を取り上げ、研究史を整理した。①成立、②起源、③性格、④組織、⑤背景の集団規模の観点から時系列でまとめ、各研究者の見解の多様性を指摘した。また、人制から部民制への展開、府官制との関係性について、一定の共通理解はあるものの、有銘刀剣などの考古資料、文献史料の解釈の違いに起因することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 継体大王に関する研究史の整理について、現状は資料収集と文献整理を中心に、各論文の内容把握の段階にとどまっている。これまでの蓄積はあるが、対象とした地域や時期などに偏りがあるため、資料収集については広範囲な文献の収集に努める。また、内容の把握については丹念に読み込み、恣意的にならない網羅的な事実関係の抽出を意識して進めている。 2 継体大王に関する古墳群の考古学的な検討について、継体大王の政治拠点とされる越前地域は、これまでの研究の蓄積もあり、継体が登場する6世紀までの広域的な古墳編年の抜本的な見直しを行い、新見解が提示できている。若狭地域の古墳は、埴輪や副葬品などを実見し、データ分析を進めている段階である。併せて、継体の父の政治拠点とされる滋賀県の高島地域の古墳についても、資料収集と古墳の築造時期の再検討を進めている。 3 5から6世紀にかけての制度史に関する研究史の整理に関して、特にミヤケ制・国造制・部民制の研究は膨大な蓄積があるため、すべてを網羅することは難しい。しかし、人制に関しては研究が比較的少なく、部民制の前提となる重要な制度と考えており、新しい視点で制度史を見直す契機となる点で重視している。研究史の整理により、多様な見解を明らかにしたが、文献史料・考古資料を総合的に判断し、私見を模索している段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
1 継体大王に関する資料収集を最優先とし、令和4年度中に集め終える。文献目録を完成させ、各論文の内容把握を行ったうえで、8つに大別したテーマの要旨データベースを完成させる。これらを踏まえたうえで、継体研究の全体的な流れについて、時系列および主要な学説を中心に、ひとつの論文という形にまとめる。 2 越前地域の古墳については概ね検討を終えたので、次に若狭・高島地域について墳形・墳丘規模、埴輪、副葬品などの観点から再検討する。また、継体陵とされる今城塚古墳を中心に相似墳の検討を行い、分布や副葬品の組成を見直し、継体の政治体制について言及する。さらに、諸説ある隅田八幡人物画像鏡銘文の解釈について再検討し、継体が即位前にすでに大和を拠点としていたとする従来の説に対して、銘文の読み方など問題点を指摘し、ヤマト王権の新たな政治体制論を展開する。 3 制度史については人制の研究史整理を踏まえ、有銘刀剣の分析、他の考古資料の状況から、その成立時期、起源、政治機構、府官制との関係性など私見を提示する。また、人制から部民制への移行についても、文献史料と考古資料をもとに総合的に判断し、5から6世紀における政治体制の違いについて指摘する。さらに、国造制の考古学への適用の可否についても、研究史を整理したうえで再検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
図書購入などの資料収集を優先したため、データ処理に必要なパソコン・スキャナーなどの設備備品の購入については翌年度に見合わせた。 令和4年度は、収集文献の要旨データベース化が中心となるため、パソコン・スキャナーなどの設備を整え、作業を進める。また、コロナの状況を鑑みて、古墳や関連遺跡の現地踏査、副葬品や埴輪など遺物の実見を予定しているため、旅費として使用する。それに併せて、カメラなどを購入する。
|