研究課題/領域番号 |
21K20056
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
堀 大介 佛教大学, 歴史学部, 教授 (00913641)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 継体大王 / ヤマト王権 / 人制 / 制度史 / 古墳 / 有力墓系列 |
研究実績の概要 |
継体大王即位前の政治拠点として『日本書紀』には三国の坂中井とあり、越前の坂井地域には有力墓の集中する松岡古墳群、北陸最大規模の横山古墳群が知られる。特に横山古墳群については2001年の分布調査以来、研究は進展していないため、継体の登場を考えるうえで重要遺跡ととらえ分布調査を実施した。現地調査を踏まえ有力墓系列を再検討した結果、従来の在地勢力と東海との政治的つながりの深い新興勢力とで重層的な政治体制を構築していた可能性を考えた。在地勢力については継体ゆかりの豪族で、のちの三尾氏・三国氏につながる勢力の実態、継体の妃・尾張連草香の女・目子媛との婚姻の背景について考古学の視点から明らかにした。 また、継体王権あるいは以後の統治機構を考えるうえで重要な諸制が、六世紀に整備された部民制・氏姓制・ミヤケ制などである。特に部民制の前段階として評価されるのが五世紀の人制である。人制に関しては昨年度に研究史を整理したので、今年度は稲荷山古墳と江田船山古墳で出土した有銘刀剣の銘文分析をもとに、古墳の様相など考古学的な事実関係を押さえたうえで人制の実態について整理し、中国・朝鮮の関連史料をもとに某人などの分析も加えて、人制からみたヤマト王権の統治機構について検討した。継体・欽明朝に整備された諸制の原型は五世紀後葉には確立していた可能性があり、改めて雄略朝の重要性を再認識するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
継体大王に関する論文・書籍はほぼ集め終わり、古墳の系譜論・国家形成史論・制度史関係の資料も8割程度収集できている。現在、文献データベースの作成しながら、テーマ別の整理を進めており、各研究者の学説・見解について、それぞれ1,000字程度で要旨をまとめている。また、継体関係古墳の現地調査は、北陸や近畿圏を中心に実施しており、順調に進展している。加えて、継体の出自論と即位論を考えるうえで重要な隅田八幡神社人物画像鏡銘文、『古事記』・『日本書紀』の関連史料の分析を進めており、同時に五、六世紀におけるヤマト王権の統治機構について、人制と部民制を中心テーマとして文献史学と考古学の両分野から検討している。
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今後の研究の推進方策 |
継体大王に関する研究は膨大にあり、関連するテーマも多岐にわたるため、従来の学説・諸説を正しく理解し評価するには、研究史だけの論考をまとめる必要性を感じている。また、継体大王の人物像とその政治体制については、『古事記』『日本書紀』の記事をもとに語られるが、その実態については諸説あり、いまだに不透明な部分も多い。特に、即位に至る経緯とその政治勢力、前王権との断絶の有無、継体王権の統治機構については、文献史料や考古資料の検討を踏まえて、新たな見解を提示していく必要がある。そこで重要となるのが隅田八幡神社人物画像鏡銘文の分析や記紀の史料批判、人制・部民制・氏姓制といった制度史からの視点である。五、六世紀におけるヤマト王権の統治機構、中央集権化と地方支配の過程について、考古学だけでなく他の分野の成果をもとに具体像を提示し、最終的には継体朝前後における新たな国家形成史論の構築を目指していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナなどの影響により、当初予定していた現地調査が実施できなかったため、計画に遅れが生じた。今年度は、これまで実施できていなかった九州の現地調査を実施する予定である。
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