将来の災害、資料の被災に備えて、現在個々の地域・施設の経験により実施されている文化財の一時保管とレスキュー後の処置について、処置の方法の違いによる資料の物理的状態と保管する収蔵環境について評価が行われたうえで、最適な条件について汎用化していくことが必要である。本研究では、被災文化財資料に取られた処置条件により、資料がどのような状態の違いが生まれるのか、またそれら被災資料が保管される一時保管場所の環境整備の要点について検証を行った。 1.廃校を利用した一時保管収蔵施設における調査結果の報告について、被災文化財を中心とした資料を収蔵している、廃校を利用した一時保管収蔵施設における温湿度傾向、害虫捕獲傾向、また保管資料の劣化状態と温湿度環境との関係について調査し、結果報告を行った。通常の文化財収蔵施設とは異なり、学校を利用した収蔵庫では日射による影響が特に大きく、日射の遮断が安定した保存環境には重要であること、そのため窓等の開口部に対する処置として、断熱を有する間仕切壁を設置することの効果が大きいことを確認した。 2.被災紙資料の保存処置に関する調査研究ついて、被災資料に対する処置は多々あるが、処置の中でも特に効率的に、多量の資料に対して実施されている紙資料への真空凍結乾燥の最適条件に絞り検証を行った。真空凍結乾燥処置の事例調査及びその後の資料状態について情報収集を行い、疑似的に水損させた試料に対して、各種条件による真空凍結を施した。処置工程の条件による試料の物理強度や色の変化を調査し、適切な処置条件について検討した。 3.文化財防災に関する調査研究は、被災文化財の一時保管、一時保管収蔵施設について検討するにあたり、関係施設の情報収集を行った。また、これらを考慮するにあたり、文化財防災に関する現在の動向等について情報収集を行った。
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