最終年度である本年度には,1)北海道南西部におけるナマコブームに関する適応プロセス,2)青森県における中長期的な漁業地域変化に関する調査研究,および3)フィールドワーク方法論に関する検討を実施した. 1)について,縮小再編成期にある日本漁業において,外部市場の活況に牽引されて高価格で取引される水産資源は地域漁業の活性化をもたらす一方で,資源の枯渇・ブームの沈静化などの不安材料も同時に存在する.本調査ではその典型例として北海道におけるナマコ漁業を取り上げ,ブームに対する地域漁業の対応,そして社会-生態的変化の解明を目的とした.最終年度には北海道後志地域においてフィールド観測と質的調査を組み合わせた現地調査を実施し,縮小再編下かつブーム下での資源利用・管理システムの動態について検討した.また,前年度までの調査結果を共著論文として報告した. 2)について,初年度に作成した青森県における1970年以降約50年間の漁獲量・漁獲金額に関する市区町村別のデータベースを基礎に,青森県内の漁業地域の動態についてさらなる検討を加えた.地域別の主要魚種は県スケールでの水産政策や市区町村・漁協スケールでの戦略,そして本研究が主眼とする外部的な市場・人口動態の変化が複雑に関係するなかで変化していく.今後はこれをよりミクロなスケールでの調査研究と接合させていく必要がある. 3)については,1)および2)の調査研究を実施する中で新たなアプローチでのフィールドワーク方法論を構築し,学会での報告および報告書を執筆した.
|