本研究は、首都ダカにおける仕事をめぐるジェンダーと扶助と共同の関係を明らかにすることを目的とした研究である。 2022年8月から9月、ダカの中心地に程近いショッピングモールの小売業で販売員としている女性を中心に聞き取り調査を行った。また、これまで継続してきた手工芸品生産工場でも調査をし、生産者の経済状況や生産状況の変化に関して聞き取り調査と、生産者の自宅に訪問して参与観察を行った。最終年度はこのデータの分析、考察に当てた。 明らかとなったこととして、ショッピングモールへの販売員としての参入が本格化したのは、5、6年ほど前からのようである。パンデミックを契機としたものもいた。夫婦で稼ぐ、学生が学期の合間に仕事をするなどの状況がみられた。参入の契機としては、店の張り紙や知り合いの紹介などで偶発的に辿り着いたことが明らかとなった。また、店の選択について働く人々が主体的に選んだとは言い難い。たとえば、現地のイスラーム女性が外出時に身体のラインを隠すために着用するブルカの店で働く女性が多かったが、たまたま紹介されただけであり本人たちが必ずしもブルカ店を希望したわけではなかった。一方で、大型の携帯電話や小さなバッグ、化粧品など都市の中での欲求が拡散され、増大していく様も観察された。 非親族、親族については、仕事を紹介するというような状況では近隣の人のように弱い紐帯も積極的に活用される。むしろ親族に頼ることは複雑なポリティクスに巻き込まれることにもなり、これをあいまいに避けようとすることもある。 女性たちが賃金労働に出る場がより可視的となっていき、仕事場の中で新たな親しい関係が出来上がることもある。サービスセクターにおいては、より給与の高いところへ転職することを目指す人も多く、都市においては労働市場への参入を斡旋することだけが重視される関係ではないことが明らかとなった。
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