研究課題/領域番号 |
21K20071
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小田島 理絵 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (50454004)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 文化遺産 / 東南アジア / 支援 / 文化人類学 / 民族誌 / ラオス人民民主共和国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、以下の2点から成る。
①東南アジアを事例として、遺産の前提的概念への依存を研究対象化しつつそれぞれの文化社会の実際の遺産なるものを考察すること。 ②当該地域の遺産保護に対する外部世界の優越的関与・支援を再考することで保護と支援のオルタナティブな可能性を検証すること。
①の点に関しては、遺産の「普遍性」がいかなる進展をしてきたのか、認識論的・存在論的検証を行った。第一次・第二次資料の収集と精査から出発し、情報の整理・まとめに努めた。それを基に、本研究課題の焦点である東南アジアにおける遺産がどんなものとしていかに考えられ、保護されてきたのかを通時的・共時的に整理し、地域的な特徴を絞り出すように努めた。その際、本研究課題代表者の当該地域の文化遺産の政治学に関する既往研究をさらに発展させるように努めた。すなわち、当該地域の公共性の様相がそれぞれの文化社会的特徴を帯びていることを明らかにし、そこから遺産(公共財)のあり方の地域性や多様性を考察した。②の点に関しては、ひろく国際協力一般の歴史・政治的背景の検証から開始することとした。第二次世界大戦後の開発援助潮流にとくに注目し、当該地域に対する多分野の国際協力の特徴を考察した。そこから文化分野の支援に関する分析に努めた。①および②ともに、まずはマクロ視点での検証と整理を行った。そこから遺産保護のミクロな実際の現場へとさらに焦点を絞っていくための土台づくりを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の第一の目標である、多様な遺産と保護活動の可能性の検証のためには、まずは西欧的な遺産の考え方と保護方法に依拠した遺産の普遍性の理論的解体が必要である。この取り組みを行うため、関連する一次・二次的な基礎データ収集・集積・分析を行った。オンラインを最大に活用し、世界的に流布する遺産概念と保護活動の潮流はもとより、本研究の焦点である東南アジア地域に関しても、地域の傾向をひろくみるように努めた。これによって地域特有の課題の検証も開始することができた。今後の成果まとめに向けた土台がおおむね形になってきている。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる資料の収集を進めながら、手元の資料の比較分析を進めていく。これは、今後実施していく、東南アジアの遺産の状況を実地で参与観察を行ううえでの素地となる。
参与観察を中心とした現地調査を行う重要性は、遺産や遺産保護が理論上にのみ存在するものではなく、それらが実際の社会文化・政治・経済を反映した現象であることに関連する。遺産と遺産保護は進行形の実践であるため、その場への参加と観察によってはじめて課題が明らかになる。また現地調査によって、オンラインを活用して入手する様々な資料と現場との比較検討が可能となる。入手してきた資料の意義や価値もより鮮明なものとなるだろう。これらの手続きを踏まえることにより、既存の遺産なるものの考え方や保護のあり方の問い直しという本研究の目的を果たすことが可能と考える。
現場での参与観察には、文化分野の国際支援の場も含まれる。机の上の議論では見落とされがちな国際支援の課題および学術の課題を現場で見定めることが可能となる。これを今後の研究推進の方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の新たな試みとして、既出研究成果で用いてきた資料の源とは異なる、オンラインで得られる新たな資料源の探索から開始し始めた。同時に、本研究課題に関わる最新の議論の集積や分析を行った。こうした作業は、今後の研究の方向性に関わるために、時間をかけて慎重に行う必要があった。こうした作業を踏まえて、研究対象地域に関するミクロで詳細な資料の収集・分析を行うことが可能となる。研究対象地の現場に焦点をおく資料収集・現地調査は、ウイルス禍のなか、その実行可能性がより広がる次年度での実施を見据えてきたが、状況を見定めながらこれを余裕をもって行うことができるように助成金を用いたいと考える。
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