本研究では、法学の目的をメタ倫理学・科学哲学の知見を使って明らかにするとともに、「最良の説明への推論」が、法学方法論の一般的な基礎として正当に適用可能であることを示した。 まず前者については、学問とは何か(とりわけそこで追究されるべき真理とはなにか)を先ず検討した。学者が議論を正当に行っているとすれば、そこで追究されるべき真理は、少なくとも規範的受容可能性構想が持つ程度の心理独立性が必要であり、かつ、それで足りる。この条件を満たす真理構想のうちどれが適切かは真理論やメタ倫理学の問題となるが、ここでそれに立ち入る必要はない。規範的受容可能性構想以上の真理構想は、少なくとも事実的受容可能性とは区別されるものを真理条件とすることによって、学問における真理追究が、相手の説得以上の何かであることを要請するからである。 それでは法学とは何かを検討した、結果として、法学とは、法が公益・権利保障をより良く実現することに直接に役立つ真理への到達を目的とした信念の正当化の追究であることを正当化することができた。 後者については、「最良の説明への推論」に関する認識論の知見を整理・検討することによって、その方法論が一般的な正当化の方法論として用いることができることを示した。より具体的には、第一に、IBEと他の推論の対立は、理論的価値のリストに何を含めるかという問題に還元される。第二に、IBEを差し当たり真として受け入れるべき仮説を同定するためのヒューリスティックとして理解する構想(IBEのヒューリスティック説)は、穏当ではあるが、それ故に強靭である。第三に、「事実を最良に説明する仮説は真である」というそれ自体としてもっともらしい仮説に対して、すなわちIBE自体に対してIBEを適用することによって、IBEは循環論法ではない形で正当化される。 今後は、これらの知見を用いて各研究方法論を具体化していく。
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