令和4年度は、令和3年度までに行った比較法的研究の結果を必要に応じて補充しつつも、主に日本法の下で、地方の国政参加のチャンネルを第二院を介して制度的に担保する具体的な制度設計の可能性やその限界について考察することを研究の中心に据えた。また、その結果について、論文・口頭報告の形で公表することで幅広くフィードバックを受けた。 主要な論文としては、石原佳代子「地域代表としての第二院設計の可能性と限界(二)」法学論叢191巻4号(2022年)27頁-60頁、「同(三)」法学論叢191巻5号(2022年)48-81頁が挙げられる。本年度の主たる研究成果である、日本法の下での具体的な制度設計に関する考察を展開した「同(四)」から「同(七・完)」についても既に脱稿しており、来年度以降順次公表予定である。また、口頭での研究報告としては第9回アジア憲法フォーラムにおいて、「The Upper House as a Regional Representative Body? Is it desirable to transform the Upper House into a regional representative body? -From the viewpoint of the“regions” and of optimizing bicameralism-」との報告を行い、第二院を国―地域の接合の場とするとの見解について、海外の研究者からのコメントを受けた。 本研究を通じて、現行の日本の統治機構のしくみの下で、国の立法手続きへの地方の参画可能性を拡充することに関しては、課題が多くあることが浮き彫りになった。これらの課題の要因の一つである、国会議員が「選挙された全国民の代表」とされることに関して、それが現代的文脈においてどのような意味合いを持つのか、についても本年度研究を進めた。
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