研究課題/領域番号 |
21K20089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高原 知明 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (80909309)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 裁判官 / 経験則 / 会社訴訟 / 専門的知見 / 専門知 / 暗黙知 / 訴訟記録 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究の初年度であった。研究素材の収集については、東京地方裁判所に保管中の終局事件の訴訟記録のうち会社訴訟に関するものの2年分を網羅的に調査、収集及び検討するという基本方針を採用し、同裁判所に赴いて記録を実際に閲覧するなどして情報の収集作業に務めた。本年度の研究期間は実質半年であったので、作業の一部を次年度に持ち越す結果となった。この前提作業の成果は、それ自体、我が国における専門訴訟の現状を実証的に描き出す資料となり得るものとなる。 この間、本研究に必要な文献等の収集検討作業をしたほか、令和4年5月開催予定の第92回日本民事訴訟法学会大会で予定されている「裁判官による専門知識の収集と利用」を含む「民事裁判官の権限行使をめぐる規律のありかた」と題するシンポジウムの準備作業に引き続き参加し、議論に加わった。その中で、本研究と関連する先行研究の到達点や今後の見通し等についての最新の議論状況に接した。 研究準備作業と並行して、基礎的な文献を収集し、精読する作業を進めたほか、本年度は常勤教員として総合大学に所属した初めての年度であったことから、他分野においてどのようなトピックが本研究との関連で問題になっているのかを把握するため、他部局において主催する講演会やセミナーに積極的に参加し、情報収集に努めた。専門的かどうかは別として、ある経験則や知見に関する関係者における認識の二極化、多極化という現象は、裁判実務の現場のみで問題になっているわけではないという実情を知るに至った。これを契機に、科学論に関する文献を集中的に収集し、裁判官が一定の知見を収集獲得し、取捨採否していく動態を把握する手掛かりを得ることに努めた。 なお、上記の研究準備作業の中で抱いた問題意識等に基づいた派生的な研究内容を、勤務校の紀要で公表する作業を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な文献収集作業はおおむね順調に進展している。 本年度の研究期間(半年間)では、新型コロナウイルス感染症まん延状況の刻々と変動する中で、研究素材となるべき訴訟記録(判決書写しを含む。)の収集作業を完了させるには至らなかったものの、一定程度の分量の研究素材を、本年度末までに収集することができている。 他方で、科学論を中心とした諸分野における議論状況に関する文献の収集、検討、我が国における裁判官研修の現状等のフォローアップについては、当初予定よりも前倒しで進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究素材となる訴訟記録(判決書写しを含む。)の収集検討作業を継続完了させる。その結果を、成果の一部として取りまとめることを予定している。 この成果に基づき、かつ、隣接諸分野で既に得られている知見や課題を踏まえつつ、裁判官における経験則等の収集、獲得、取捨採否の一連の過程の構造化という本研究の中核を成す作業に本格的に取り組み、その研究成果を取りまとめて公表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の内訳は、物品費及び旅費の約半分に相当する額である。本研究の令和3年度活動期間が半年であったことによる。 令和3年5月の新規申請に当たり、その点を織り込んだ上で令和4年度の研究経費を見積もっている。研究課題を計画どおり推進した場合、令和4年度に次年度使用額を含めた全額を支出することとなる見込みである。
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