最終年度である2022年度では、日本法については、前年度に引き続き、これまでの「特段の事情」論及び民事訴訟法3条の9の解釈適用、同条の立法経緯、及び、これらに対する考察についての調査を継続した。他方で、アメリカ法についても、前年度に引き続き、不便宜法廷地に関する判例及び学説についての基礎的な資料の収集・調査に努めた。また、同時に、主にドイツ法の視点からの、アメリカの不便宜法廷地に対する評価を調査した。これらを踏まえて、現在、日本法とアメリカ法の比較法的な検討を踏まえて、成果を公表する準備を行っている。 2022年度中の研究成果としては、主に日本の国際裁判管轄についての調査・検討の成果として、後友香「国際訴訟競合における事件の同一性」国際私法年報24号143頁~166頁(2022年12月)、及び、後友香「カリフォルニア州裁判所への専属的管轄合意の有効性[東京高裁令和2.7.22判決]」ジュリスト1576号162頁~165頁(2022年10月)がある。 研究期間全体を通じて、日本及びアメリカにおける不便宜法廷地を理由とする却下をめぐる諸問題、とりわけ、却下においてどのような要素が考慮されるべきか、について、資料の収集・調査を行い、現在も継続して比較法的な検討を行っている。今後、本研究に基づく比較法的な検討によって得られた、日米における不便宜法廷地に関する理論と実務の将来的な展望や、日本における不便宜法廷地の適正な判断のあり方についての知見を公表する作業を進めていきたいと考えている。なお、当初は、アメリカに現地調査に赴く可能性も検討していたが、新型コロナウィルスの状況に鑑み、断念した。
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