研究課題/領域番号 |
21K20096
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中村 江里加 帝京大学, 法学部, 助教 (70907568)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 信義誠実原則 / アカウンタビリティー / 協力義務 / 国際組織法 / 国際法 |
研究実績の概要 |
2021年度は、①国際組織法の法理論に関する先行研究の収集・分析、②信義誠実原則や協力義務に関する先行研究の調査、③関連国際裁判例の調査・分析、および、④ヨーロッパ国際法学会研究大会や定期開催されるウィーン大学法学研究科主催の討論会にオンラインで参加し関連する国際法実務や最新の研究に関する報告を傍聴した。これらの調査を通して、国際組織の設立文書の解釈方法に関係する最近の議論を検討し、また、裁判官や研究者が信義誠実原則や協力義務についてどのように議論しているのか、同原則と同義務の基礎としてどのような法的利益があると考えているのかの整理に努めた。 原則や義務の基礎にある法的利益を検討する方法として、国際組織法の分野における信義誠実原則や協力義務の適用例だけでなく、国際環境法や紛争解決手続におけるそれらの原則や義務の展開に注目し、分野間での比較検討を行った。 加えて、上述のように検討対象を国際環境法や紛争解決手続に広げた結果、信義誠実原則や協力義務に類似する機能や性質を持つその他の規範についても目を向けることとなった。具体的には、ある法的問題に関して適用する法がない状況において、新たな規範の基礎となる「法の一般原則」や、国際法上の法的利益が侵害されることを未然に防ぐことを定める「相当の注意義務」に注目し、これらの規範と信義誠実原則や協力義務との共通点や差異を分析した。 上記の研究成果を論文にまとめ2022年度に脱稿すべく準備を進めている。同論文については、同論文の概要を読んだ海外の研究者からの執筆依頼があり、論文集に発表する予定である。 2022年度に開催を予定している、本研究課題に関する意見交換、また、議論を深めるための複数の研究者を招待した討論会の準備を進めることができた。2021年度には、開催に協力する海外の研究者と数回の会合を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の収集・分析や研究課題の分析を計画どおりに進めることができた。来年度に予定している討論会の準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、先行研究の収集・分析と関連国際裁判例の調査・分析を行う。2022年度には、海外の学会研究大会において本研究に関する報告を行うことが決まっており、本研究に対する批判や意見を得ることによって、研究内容について必要な再検討を行う。2022年度は、2021年度までの研究成果をまとめ、分析を深めるために複数の研究者を招待した討論会を開催する。また、国際組織において立法を促す方法の検討に着手し、この課題に関して助言を与えてくれる研究者や実務家へのインタビューを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆依頼を受けて、2021年度に予定していた論文校正費を2022年度に使用することとしたため、また、2022年度に予定している討論会を当初の構想より規模を拡大して実施するため、次年度使用額が生じた。
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備考 |
中村江里加「ビジネスと人権」(研究報告)「国際経済協定に基づく貿易と投資の紛争解決基準と国家の公共政策空間の横断的研究」科研費研究グループ研究会(2021年6月26、オンライン) 中村江里加「人権侵害を理由とした貿易規制権限の問題点」(研究報告)「国際経済協定に基づく貿易と投資の紛争解決基準と国家の公共政策空間の横断的研究」科研費研究グループ報告会(2022年3月20日、オンライン)
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