研究課題/領域番号 |
21K20098
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松田 和樹 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10906861)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 法哲学 / 政治哲学 / 家族法 / ジェンダー法学 / リベラリズム / フェミニズム / 子どもの権利 / 婚姻制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、マーサ・ファインマンの議論を受けて婚姻法の契約法化の内実と養育の制度のあり方を考察してきた種々の論者の議論を、契約法の哲学と子どもの権利の哲学を用いて分析することで、来たるべき親族法の最良の構想を明らかにしようとするものである。 2021年度・初年度は、上半期に『法と哲学』に掲載した自身の論文について得たフィードバックをもとに、生殖に対する因果的責任と養育責務との規範的関係について一層の検討をする必要があることが分かったため、この点について更なる研究を遂行した。 婚姻法の契約化については、上半期に、近年注目されているエリザベス・ブレイクやクレア・チェンバーズの議論について検討した研究報告を、若手法哲学研究会と日本女性学会にて行ったので、ここで得たフィードバックをもとに研究を進めた(このうちブレイクの議論を検討した論文は第一稿を完成させた)。以上を通じて、共同生活関係を築く当事者間の交渉力格差をどのように是正するかについて、契約法と分配的正義に関する研究を更に進める必要があることが分かったため、研究を進めた。 また、本研究が実定法学に対して持つ含意について研究し、山形大学で開催された科研費研究会にて報告した。 以上の作業を並行して、分析フェミニスト哲学関連書籍(英語)の翻訳作業を行い、第一稿を完成させるとともに、本研究成果を社会に還元する取組みとして、ウェブ雑誌『現代ビジネス』に論考を寄稿し、一定の反響を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
後述のように、2021年度に遂行した研究をもとに、次年度は当初の予定よりも多くの研究成果を発表できる見込みが立っているため、「当初の計画以上に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は早期に、本研究が実定法学に対して持つ含意を説明する論文(1.2万字程度)を執筆・発表するとともに、昨年度から執筆し第一稿が完成済みの「最小婚姻」に関する論文(3万字程度)を仕上げ、発表する。その後、2019年度にIVR世界大会にて発表した内容や、2021年度に日本女性学会で報告した内容を叩き台として、クレア・チェンバーズの「婚姻なき国家」を批判的に考察する論文(1.3万字程度)を執筆する。この際に契約法と社会保障法との機能分化のありように関する規範的指針について更に研究を進める必要がある。以上の論文と、2021年度に刊行した養育責務に関する論文(4万字程度)とを有機的につなげ、2022年度末までに博士論文の第一稿を完成させ、提出する。この過程で、養育責務に関するジョセフ・ミラムの書籍の書評を執筆しつつ、特に養育責務の意思説と因果説の対立枠組みそのものを相対化し、生殖に対する責任と養育責務との関係を検討する作業を遂行する。 これと並行して、分析フェミニスト哲学関連書籍の邦訳を完成させる。 以上の研究計画を遂行する上で、2022年度中に少なくとも一度、国際学会にて自身の研究を発表し、フィードバックを得たいが、COVID-19感染拡大とこれに伴う日本の厳格な出入国管理ゆえに、今年度中に成果発表の場を確保できるかどうか、現在のところ目途が立っていない(申請時には、IVR世界大会2022@ブカレストか、East Asian Conference on Philosophy of Lawでの研究報告を計画していたが、前者は対面開催のみのため事実上参加不可能であり、後者は開催日程が決まっていない)。国際学会については引き続き情報収集に努め、今年度中の発表を目指すが、もしこれが困難であるようなら、2023年度に本研究課題を延長することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に入手する予定であった書籍が年度をまたいで届くこととなったため、次年度使用額が生じた。次年度使用は書籍の購入費用に充てたい。
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