研究課題/領域番号 |
21K20100
|
研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
吉良 悟 大阪経済法科大学, 国際学部, 助教 (80913227)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 在外自国民保護 / 自衛権 / 累積理論 / 「無意思あるいは無能力」理論 |
研究実績の概要 |
現時点の研究状況は、①在外自国民保護のための武力行使の前提となる侵害内容及び②「『無意思あるいは無能力』理論」に関する学説状況を検討したところである。まず、侵害内容は、生命に対する侵害と財産に対する侵害とに分類することができる。検討の結果、現在では、在外自国民の財産に対する侵害に対して、国籍国が軍隊を派遣することは、大多数の国際法学者が否定的であることが判明した。 他方、生命・身体に対する侵害であるが、国家実行や学説においては、状況により在外自国民保護のための武力行使を肯定する見解が有力であるといえる。肯定する立場からは、次の3つの基準が提示される。すなわち、①自国民に対して差し迫った重大な危険の虞があり、②領域国が自国民を保護する意思がないか、あるいは、保護する能力を有しないこと、③執られる措置が自国民保護の目的に限定されていることである。これらを充足すれば、在外自国民保護のための武力行使が許容できるとするのである。以上の3つの基準には、自衛権の古典的先例とされるキャロラン号事件後に提起されたウェブスター・フォーミュラと、「『無意思あるいは無能力』理論」が混在している。その中で、「『無意思あるいは無能力』理論」については、概ね同理論に関する学説状況の検討を終えたところであり、現在は、同理論に関する国家実行の分析に継続して取組んでいる。 以上の分析結果については、2022年度内に公刊することを予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年2月に、ウクライナによるロシア侵攻が開始された。侵攻を正当化するロシアにとって、在外自国民保護という国際法上の論点がどの程度影響を与えたのかを検討することに時間を要したため、「『無意思あるいは無能力』理論」に関する国家実行の分析が、一部残されている。しかし、それ以外の論点の考究は当初の計画通りに進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシアによるウクライナ侵攻の法的根拠に関する論考の検討を継続しつつ、「『無意思あるいは無能力』理論」に関する国家実行を網羅的に検討するとともに、在外自国民保護のための武力行使に否定的であるとされてきた途上国の法的認識の変遷を分析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度終了間際に、注文書籍が書店の都合により手配不能となったため、当該書籍購入に充当する予定であった助成金は使用せずにいた。当該助成金については、2022年度の書籍購入のために使用する。
|