本研究は、米国ケネディ政権における「平和のための宇宙(Space for Peace)」政策の展開を、従来看過されてきた科学者の役割に着目して解明するものである。具体的には、1960年台前半のケネディ政権における宇宙政策決定過程を詳細に辿り、大統領科学諮問委員会(PSAC)が今日に至る米国の「平和のための宇宙」政策の既定路線化を決定づけるうえで重要な役割を果たしたことを示す。それにより、従来「冷戦構造」の派生物として理解されてきたケネディの宇宙政策に新たな解釈を提示する。2023年度は本研究プロジェクトの最終三年目(COVID-19の影響により歴史資料館が閉館していたため、延長申請を行った)にあたる。 具体的な作業としては、以下の三点に取り組んだ。第一に、新型コロナウィルス感染拡大の影響でこれまで十分に行えていなかった追加の資料調査を、アメリカにて行った。マサチューセッツ工科大学図書館(ボストン)では大統領科学諮問委員会委員長に関する資料を収集し、ジョン・F・ケネディ大統領図書館(ボストン)では主に宇宙政策および軍備管理軍縮交渉に関する資料を入手した。第二に、上記資料の解読結果をもとに実証作業をすすめ、論文を執筆中である。論文として取りまとめ次第、海外査読付きジャーナルへの投稿を目指す。第三に、これまでの研究成果を踏まえた単著出版計画に取り組んでいる。1950年代後半から1960年代前半にかけての米国宇宙政策研究に関する成果を広く公表することを目指す。出版社は選定済みであり、本年度の科研費研究成果公開促進費の獲得を目指す。
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