研究課題/領域番号 |
21K20109
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
小松 寛 成蹊大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (50546314)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 東アジア国際関係 / 自治体外交 / パラディプロマシー / 非国家行為体 / 中華民国 / 中台問題 |
研究実績の概要 |
本研究では沖縄返還後の沖縄と台湾の関係がどのように変わったのかを問う。沖縄返還後になされた日中国交正常化や冷戦終結が、沖縄と台湾の関係にどのような影響を与え、それが東アジア国際関係にとってどのような意味があったのかを、沖縄と台湾の関係を通して考察することが目的である。 その成果の一部は「沖縄県による自治体外交と中台問題」(平良好利・高江洲昌哉編『戦後沖縄の政治と社会―「保守」と「革新」の歴史的位相』吉田書店、2022年)として発表した。ポイントは以下の通りである。 沖縄返還以前、米国の下の沖縄と台湾は社会主義勢力と対峙する自由主義陣営として、協力関係にあった。しかし沖縄返還および日中国交正常化に伴う日華断交、そして70年代に続いた沖縄の革新県政の影響により沖縄と台湾の関係は相対的に低下した。そこで1980年代の西銘順治県政(保守)は台湾との関係修復に乗り出した。その具体策が沖縄県初となる海外事務所の台湾への設置であった。これに対し日本の外務省は国交のない台湾への事務所設置に難色を示したが、設置主体を民間とし、県職員は出向という形式で実現する。 1990年代、冷戦終結という国際政治の大きな変わり目において、沖縄では「平和の配当」を求めた大田昌秀(革新)が県知事となった。大田は中国との関係強化を図る。それは福建省との友好県省提携という形でなされた。しかしその実現には、知事・副知事の台湾への訪問禁止という条件が付されていた。これは日中国交正常化に伴う日華断交の相似形と言える。この時期、台湾の国民党は1000億円の沖縄投資構想を提示した。ポスト香港および国際都市形成構想による規制緩和という状況が、台湾から沖縄への関心を惹き寄せることとなった。さらに福建省友好県省提携に伴う関係断絶への反発として、台湾側の存在感を提示することも目的の一つであった可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を共著として出版できたことは、順調に研究計画が進んでいることの証左となる。その後の研究についても、沖縄(沖縄県立図書館、沖縄県公文書館、那覇市立図書館)で収集した資料への分析を進めている。新型コロナウィルスの感染拡大により台湾での調査は実施できなかったが、その分を沖縄側の資料収集及び分析に費やすことができた。これは当初から想定していた範囲内のことであり、概ね順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は引き続き沖縄側の資料の分析のほか、台湾での資料収集を予定している。これにより台湾側の沖縄との交流を行う目的や意義に関する認識を分析することが期待される。今年度も台湾での調査が困難な場合は、沖縄側の資料のほか、オンライン化されている資料(新聞データベースなど)も活用することで、研究の進捗に支障が出ないようにする。 その他、関連する学会や研究会へは積極的に参加し、最新の研究動向と情報の収集に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、台湾出張が実施できなかった。そのため、該当費用を次年度使用額とせざるを得なかった。今年度は台湾での調査を行う予定である。その他、沖縄での資料収集およびオンラインデータベースの利用費用となどとして活用していく。
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