研究課題/領域番号 |
21K20114
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
水谷 仁 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (40788379)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ヘルマン・ヘラー / 政治思想 / ヴァイマール共和国 / 政治と生 / 責任 / 国家 / 弁証法 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツの国法学者ヘルマン・ヘラーの政治思想について独創的な解釈を提示することを目的としている。彼の生きた時代であるヴァイマール共和国期は、それ以前のドイツ第二帝政期と異なり、ドイツの歴史上初めて国民主権が憲法によって保障され、国民が政治=統治の主体となった時期であった。さらに、ヴァイマール憲法によって、共同社会の一員として他者と共にともに生きる理念が提起されてもいた。ヘラーはそうした憲法を擁護するとことに加え、共同社会の一員として他者と共に生きる人間の姿や人間の生を自身の政治観と関連づけていた。本研究においては、そうしたヘラーの政治思想を、〈政治と生をめぐる政治思想〉として提示することを目的としている。 ここまでの研究実績として、2022年度政治思想学会(2022年5月22日)において、報告論文・レジュメを作成した上で、研究報告「政治と生をめぐるヘルマン・ヘラーの政治思想――ヴァイマール共和国における政治的主体像」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画としていた通り、2022年度政治思想学会において、以下の三点についての報告することができているため。 ①ヘラーが人間の多数性や多様性を尊重し、それゆえに人間の間に生じる対立や闘争の存在を率直に認めつつ、「私たち」という共同意識や「共同体の意志」を通した結合によって政治的統一体が形成・維持・自己主張していく、というダイナミズムを政治に見出していた。 ②ヘラーの政治思想においては、特定の領域上で人々を強制し秩序づける国家という客体は、「生きている人間」という主体の無限に多数で多様な行為を統一していく「人間的-社会的な生の形式」であり、両者が相互に連関し共属して一つになっているもの、という国家観が存在していた。 ③ヘラーは、国民や国家のような共同体という客体に対して、政治的な行為者がそれに従いつつも、自分自身の行為を通じて責任を負う、という政治的な主体像を有していた。
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今後の研究の推進方策 |
政治思想学会研究報告のために執筆した報告論文とディスカッションにおけるやりとりを基にした研究論文を作成し、政治思想学会学会誌『政治思想研究』に投稿する。 ディスカッションにおいて、ヘラーの政治思想がその政治思想的な重要性にもかかわらず同時代のドイツ国民に膾炙しなかった理由、ヘラー特有の概念である「社会的同質性」の内実、19世紀ドイツ教養市民の伝統の継承者としてのヘラー、本研究が提示したヘラーの「弁証法的思考」と他の学者の有していた「組織的思考」との相違点、同時代の国法学者ルドルフ・スメントに対するヘラーの政治思想の独自性について論点が挙がり、それぞれについて応答したため、これらも研究論文に反映していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症により、当初計画していたドイツでの資料調査を、現時点で実現できていないため。 感染症の拡大状況と社会情勢が許すようであれば、2022年度にドイツでの資料調査を計画している。
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