ヘラーは人間の多数性や多様性を尊重し、それゆえに生じる対立や闘争を率直に認めつつ、共同意識を通した結合によって政治的統一体が形成・維持・自己主張していく、というダイナミズムを政治に見出していた。さらに彼の政治思想において、特定の領域上で人々を強制し秩序づける国家という客体は、「生きている人間」という主体の無限に多数で多様な行為を統一していく「人間的-社会的な生の形式」であり、両者が相互に連関し共属して一つになっているもの、という国家観が存在していた。 本研究が提示するこうした〈政治と生をめぐるヘラーの政治思想〉は、現代社会が内包する多元性と統合とのアポリアに対する解決策としての意義を有している。
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