研究実績の概要 |
本研究の目的は、従業員が上司に対して、沈黙するか発言するかを場面によって切り替える行動のメカニズムを明らかにすることである。この目的を達成するために、従業員とその上司を対象者とするケース・スタディを通じて、従業員の沈黙および発言場面の切り替え行動に与える影響要因を明らかにする。 本研究の研究実績は、4点ある。1点目は、研究論文の執筆を行なった。令和3年度には、COVID-19に伴う従業員のコミュニケーションの変化において、従業員がいつ、どこで、誰に対して沈黙や発言をするのかを明らかにした論文を執筆した。令和4年度には、従業員の沈黙と発言の概念を弁別し、職場の複数場面で発生する従業員の発言に関して論じた。2点目は、学会報告を実施した。令和3年度には、国内学会(人材育成学会)にて、オンラインコミュニケーションが従業員の沈黙や発言に与える影響に関する研究成果を報告した。令和4年度には、国際学会(International Conference on Business, Economics and Information Technology 2023)にて、従業員の発言が創造性に与える影響に関する理論的研究の成果を報告した。3点目は、国際交流研究会での報告がある。Pukyong National Universityとの国際交流研究会にて、日本の職場の文脈における従業員の沈黙と発言に関する理論研究の発表を行なった。4点目は、学内セミナー(学習プログラムSDセミナー)にて職場における従業員のコミュニケーションについて研究成果の報告を行なった。本報告では、主に従業員間の対話や、その実践方法について論じた。以上の研究成果は、従業員の沈黙や発言における場面の切り替え行動のメカニズムを明らかにした点で理論的意義がある。一方で、実践的には、従業員が抱える創造性と業務の効率性のジレンマの解消に向けた足がかりとなった。
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