研究実績の概要 |
昨年度に投稿した"Dual revolution and Saxon cotton industry fixed geographical distribution, guild regulation, and quality improving spirits"は,投稿した雑誌において,更なる分析が必要と判断された。これには新たな史料の調査が必要となるため,本研究期間においては本論文を完成させることはできないと判断した。引き続きの検討課題として,今後の資料調査によって論文化を試みる。 その代わりに研究期間中に,18世紀後半ザクセンの懸賞課題を通じて設立された紡績学校・機織学校について史料を精読,整理した。一般的にザクセンにおける技術者教育研究は,18世紀中頃の鉱山アカデミー(現在のフライベルク工科大学)や19世紀中のドレスデン工業教育施設(現在のドレスデン工科大学)といった,現在の高等教育機関へと発展する組織に注目が集まってきた。一方でこの研究期間中に,これまではほとんど知られていなかった18世紀中の技術教育機関の存在が明らかになった。この技術教育機関は,従来は繊維産業が営まれていなかった地域に産業を根付かせるために設立されたものである。この実態を明らかにすることで,繊維産業を中心として工業化を進展させたザクセンにおいて,懸賞課題と各種の技術教育機関が,産業へどのようにして人材を輩出したかを示すことができる。本研究期間中に論文化または学会で報告することはできなかったものの,2024年中に本研究内容について国内学会(日本産業技術史学会,2024年6月)で報告することが決定している。
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