PMSはパフォーマンスを管理される側の従業員が,業績評価システム(PMS)の活用のされ方をどのように経験するかによって,その効果が異なることが指摘されている。本研究では,PMSがイネーブリングの形で利用されている場合に,PMSがオペレーションレベルのチーム学習行動およびチームの有効性に与える影響を明らかにした。イネーブリングPMS の効果を理解するために、日本における質問紙調査を実施し,450件のサンプルを収集した。分析には,Smart-PLSを利用した構造方程式モデリングが適用された。分析の結果,イネーブリングPMSの全体透明性という特性がチームの有効性の向上に寄与し,その関係を部分的にチーム学習行動が媒介していることが示された。このことから,一般従業員をチームパフォーマンスの向上に動機づけるためには,自社の戦略の理解や自分の仕事が組織全体の中でどのような位置づけにあるのか,また自分の仕事ぶりが,上流や下流にどのような影響を与えるかといった情報を提供するようにPMSを設計し,活用することが重要であることを示した。またチーム学習行動を高めるには,イネーブリング設計の柔軟性,すなわちパフォーマンス情報を様々な形で収集・集約できる選択肢が多いほど,チームの学習行動を促すことも明らかにした。イネーブリングコントロールがオペレーションレベルのチームにどのような有用性をもつのかを示すことができた。またイネーブリングコントロールがもつ従業員のウェルビーイングに着目した研究にも着手することができた。
|