研究実績の概要 |
本研究は、クチコミを通じた対人コミュニケーションが発信者自身にどのような影響をもたらすのか、という点について考察するものである。社会心理学領域では、対人コミュニケーションが発信者自身に及ぼす影響の可能性を示唆する効果として、Saying-is-Believing効果(Higgins & Rholes, 1978)が提起されている。その効果は、聴衆がコミュニケーションのトピックに対し好感を持つ場合、発信者はその聴衆の態度に合わせてメッセージを加工して発信することによって自身のトピックへの好意的印象が形成され、ならびに経時的にその好意的印象が増幅するといった効果である。その知見を援用し、オンライン上でのクチコミの特徴(一斉に複数の聴衆と情報を共有すること)を踏まえ、複数の聴衆に対する認知の違いによって、クチコミ行為が発信者自身に及ぼす影響が異なるかを検討していく。 2023度においては、SIB効果の実験パラダイムを利用して、クチコミ文脈におけるSIB効果(クチコミ発信行為が発信者自身の製品・サービス、ブランドへの態度・記憶に及ぼす影響)が複数の聴衆に対する認知によって異なるか、また、そのSIB効果を顧客経験に及ぼす可能性があるかについて検証した。具体的に、複数の聴衆に対する認知的要因として、集団の実体性(Campbell, 1958)およびそれに関わる集団の所属性(Echterhoff, Kopietz, & Higgins, 2017)を主な独立変数に設定し、態度や記憶といった従来のSIB効果の従属変数以外に、顧客経験(Chahal and Dutta, 2015)を従属変数に含めた実証的研究を行った。当該研究は、マーケティング学会における報告・投稿によって情報発信を図った。
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