本研究は,生産性のホットスポットとなっている地域を明らかにできる計量経済学的な統計モデルを開発するものである.空間計量経済学の知見を取り入れた生産性/効率性の分析手法である空間確率フロンティアモデルは,空間相関のような大域的な空間的相互依存関係を描写できても,生産性のホットスポットといった局所的な空間における現象を捉えることは困難である.そこで,パラメトリックな計量経済学的な生産性/効率性の分析手法である「確率フロンティアモデル」に,画像処理の分野等で使われている「スパースモデリング」の知見を応用することにより,生産性のホットスポットを検出できる新たな統計モデルを開発した. なお,確率フロンティアモデルにおいて空間的相互依存関係を考慮する方法に関する論文を邦語で執筆し,28th International Input-Output Association Conferenceなどの学会で報告したのち,『経済科学』に掲載された.これは,空間計量経済学の知見を導入した既存の確率フロンティアモデルを体系的に整理し,その特徴と問題点を指摘し,空間計量経済学以外の手法の導入の可能性についても議論したしたものである. 当初の計画では,わが国の実際のデータを用いた提案手法の適用事例を提示することを目指したが,今回の研究期間では至っていない.しかしながら,提案手法は地理的空間に限る必要性もないことなどから様々な検証にも使用できる応用可能性の高い手法であると考えられる.
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