本研究課題では、多地域産業連関分析モデルとデータ包絡分析法を組み合わせることで、グローバルサプライチェーン構造を考慮した国・産業レベルの効率性分析モデルを開発し、開発モデルを用いた実証分析を行った。 2023年度には、多地域産業連関表 (World Input-Output Database)を利用して、43カ国の製造業18部門のサプライチェーン効率性分析モデルの開発と実証分析を実施し、本研究成果は2023年9月に査読付国際学会のInternational Conference on Data Envelopment Analysisで口頭発表された。また、2024年2月には査読付英文誌のHeliyonに「Measuring performance of supply chains based on data envelopment analysis and multi-regional input-output analysis: An application to 18 manufacturing sectors in 43 countries」というタイトルで単著論文として掲載された。分析結果から、労働集約型産業や資本集約型産業と比べて、技術集約型産業(輸送機器、電子機器製造業等)においては特に、上流サプライヤーの環境生産性が低下傾向にあることが明らかになり、これらの産業においては生産段階だけでなく調達段階にも配慮した生産活動がサプライチェーン全体の脱炭素化に向けて重要であることが示唆された。 また、分析に使用したモデルを拡張し、Production-theoretical Decomposition Analysisを適用することで、各国・各部門のサプライチェーン効率性の改善が温室効果ガス排出量の増減にどのように影響を与えていたのかを分析し、これらの研究成果は2024年3月に開催された査読付国際学会のInternational Conference on Economic Structures 2024で口頭発表された。本研究内容については、会議で議論された内容をもとに分析モデルを改善中である。
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