モデルを現実に照らし合わせモデルのパラメータを決定するための日本の国民経済計算データ及び労働時間・労働人口について、先行文献の著者から2014年までのデータを含んだ分析用ファイルを譲り受け、最新のデータを含めるよう改訂を行った。このデータを用いて、異なる世代が存在しない場合に分析に用いるモデルのパラメータを推定した。 推定されたモデルを用いて、個々人レベルのリスクに対する保険市場が存在せず貯蓄のみがリスク回避の手段となる不完備市場モデルにおいて、個々人レベルのリスクへの保険市場が存在する完備市場モデルにおける財政再建に必要な消費税額の比較を前年度に準備したワークステーションを用いて数値計算の技法により行った。 推定されたモデルから得られた不完備市場モデルにおける財政再建に必要な消費税額が完備市場モデルのものより大きくなるという結果について、計算による結果をサポートするために理論モデルを構築し、直感的な結果が得られるよう説明を加えた。特に重要となるのは、不完備市場モデルにおいてはリスク回避のため貯蓄が過剰となり資産市場の均衡条件から利子率が減るという国債の負担を減少させる効果があるが、その一方で過剰な貯蓄は課税対象となる消費を減少させてしまいより高い税率が必要となるという逆の効果もあるということだった。両者について比較検討を行うと、本研究で推定したモデルでは後者の効果が大きくなり、財政再建に必要な消費税額がより高くなるという結論が得られることとなった。
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