本研究課題は貿易自由化による経済成長と所得格差への影響を、家計による二種類の教育選択の変化を踏まえて分析した。ここでは農業財に比較優位があり、貿易自由化で農業財価格が上昇する国に焦点を当てた。分析の結果、まず貿易自由化は農業部門で働く労働者の貯蓄を増加させて、資本蓄積による定常状態までの経済成長をもたらすことがわかった。次に農業財価格の上昇は中等教育まで受ける個人を減らすが、資本蓄積によって長期的には高等教育まで受ける個人を増やすことが明らかになった。ここから所得格差の縮小と拡大は個人間の教育水準次第で両方あり得ることが示された。さらに教育補助金等の政策の効果が世代間で異なることも示唆された。
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