本研究の目的は,「工場経理部門のサービスが,製造部門のコストマネジメントにおよぼす影響」を解明することであった。コストマネジメントにおける原価情報の役割を解明した先行研究では,同一の原価情報を利用しているにも関わらず,なぜマネジャーによってその有用性の認知や活用程度が異なるのかといった疑問は明らかにされていなかった。 そこで本研究は,コストマネジメントにおいて工場経理部門が果たす役割に注目し,マーケティングなどの隣接分野で研究が進んでいるサービス品質概念の援用し,工場経理部門や製造部門のマネジャーを対象としたアンケート調査を実施して,工場経理部門の役割を概念化した。さらにその上で,2社6工場の製造部門のマネジャーを対象とした工場内アンケート調査を実施し,製造部門のマネジャーの工場経理部門のサービスに対する認知や,原価情報の活用程度,また生産パフォーマンスを測定し,それらの変数の関係性を実証した。具体的には,「製造マネジャーによって工場経理部門のサービス品質(の認知)に違いが生じ,そのことが工場内の製造マネジャーの原価情報の需要や活用に影響すること」や,「工場経理部門のサービス品質の高さが,原価情報とその効果の関係を調整している」ことを明らかにすることができた。 これらの研究成果は,日本原価計算研究学会の全国大会で報告した後,『原価計算研究』に投稿し,掲載に至った。またこれらの研究成果は,2022年度の原価計算研究学会の学会賞(論文賞)の受賞に至るなど,一定の評価を受けることができた。
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