2021年度には、コロナ禍における取組を含む直近5年間のGDPナウキャストの結果をレビューし、その予測精度を評価するとともに、予測精度の向上に向けた課題を明らかにした。具体的には、感染症の影響を受けて経済が大きく変動する以前の期間では、モデルの予測精度が、コンセンサス予測と比べても遜色ない一方、コロナ禍における期間を含めて見ると、そうしたモデルの予測精度が大きく悪化したことを明らかにした上で、その背景には、予測に用いる伝統的な経済データにはレポーティングラグが伴うため今起こっている変化をリアルタイムに捉えることができない、データのカバレッジが十分でない場合に経済の多様な変化を予測に反映させることができない、といった点が影響していることを報告した。 2022年度においては、上記レビューの結果を踏まえ、変数選択の見直しやモデルの改良を通じて予測対象期間に関する情報が“全て利用できる”段階での予測の精度を高めること、また、レポーティングラグにより予測対象期間に関する情報が“十分に利用できない”段階での予測の精度を高めるため伝統的な公的統計に限らないHigh-frequency alternative dataの活用を検討し、その成果を報告した。具体的には、コロナ禍において生じた日本経済の特徴的な変化に対応するため、GDPナウキャストの予測モデルを改善するとともに、予測のより早い時点から、その精度の向上を図るため、伝統的な経済データよりレポーティングラグが短く、その結果、よりタイムリーに経済の動向を捉えるalternative data、具体的には、クレジットカードの利用情報を用いることにより、特に予測の初期段階において、より精度の高い予測を実現させる可能性があることを報告した。 こうした研究の成果は、GDPナウキャスティングとして東京財団政策研究所より定期公表され、社会に実装されている。
|