近年、技術の発展に伴い、所有とは異なる様々な消費モードが増加し、消費者行動が新しい消費モードの選択に与える影響について、研究者の関心が高まっている。従来、消費者行動研究は、主に製品カテゴリー内のブランド間競争に焦点を当ててきた。しかし、所有に代わる新しい消費モードの出現は、製品カテゴリーを超えた消費者の選択に取り組む必要性を示唆している。抽象的な動機や価値観は、製品カテゴリーを超えた選択に影響を与えるが、所有と新しい消費モードの代替関係を生み出す要因と消費者の内在的要因との関係は明らかではない。 本研究では、カーシェアリングサービス(CSS)とアパレルのサブスクリプションサービス(ASS)の利用者を対象としたインタビュー調査の結果を分析することにより、消費者特性を分類する2つの次元、1)代替と補完、2)製品関与の高低を導出し、消費者の内在的要因となるこれらの次元は、新しい消費モードの選択とその後の利用パターンを規定する要因に影響を与えるという仮説を設定した。 設定した仮説は、CSS/ASS(SS)の利用者を対象としたアンケート調査の結果を分析することにより検証した。その結果、補完タイプと製品関与が高いタイプは、SSの選択を規定する要因に影響を与えることを実証した。本研究の最も顕著な発見は、従来、所有の代替と考えられてきたSSにおいて、補完タイプは代替タイプよりも利用頻度、継続利用意向、商品の購入意向が高いことである。また、製品関与度は、バラエティと満足が媒介する間接効果に影響を与えることがわかった。 このように、CSS/ASSの事例では、代替・補完と製品関与の内在的要因によって分類された消費者特性は、所有とSSの選択を規定する要因に与える影響において類似した傾向を示したことは、シェアリングエコノミーの進展に対応したマーケティング戦略や消費者行動研究の発展に示唆を与える。
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