本研究の目的は、伴侶動物に対する墓、すなわち動物霊園(伴侶動物の遺骨を埋蔵・収蔵する施設)が成立し、増加した社会的意味を探究することである。 最終年度である2022年度では、動物霊園が成立し、増加した経営・技術的背景を分析し、学会報告と論文投稿を行った。 ここでは、まず移動火葬車(移動式の動物用火葬炉)の普及が、動物霊園の開発、管理・運営上のコストダウンにつながっていることが明らかになった。それゆえに、移動火葬車の普及によって新たな事業者の新規参入が容易になり、動物霊園が増加するとともに市場競争がすすみ、形態が多様化したことを把握した。そのなかで、悪質な事業者との差異化のために、動物霊園の利用者の意識を踏まえて、伴侶動物を人間の「家族」と等しく扱うことが重視されていることを知見として解明した。これらの知見については、2022年度に開催された日本社会学会大会で学会報告を行い、その学会報告で得られたコメントを踏まえ、論文を投稿した。 また、研究期間全体を通して、動物霊園が成立し、増加した背景には、第1に人間の墓地と比較して、動物霊園の開発と管理・運営への法規制が2000年代以前まで緩かったことが関わっていることを示した。そして、第2に移動火葬車の普及が動物霊園の開発、管理・運営のコストを下げ、さまざまな事業者の新規参入が容易になったことが関係していることを解明した。 以上の結果から、伴侶動物に対しての墓が成立し、増加した理由は、伴侶動物の「家族化」だけで説明しきれないことが明らかになった。この点は、伴侶動物への「家族化」をはじめとした動物と社会のかかわり合いを市場や産業の変化から捉える可能性をもつという示唆を含むものである。
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