研究課題/領域番号 |
21K20188
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
末吉 彩香 筑波大学, 人間系, 研究員 (90908790)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 就労支援 / ナラティブ / 自己効力感 / 自己理解 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
2021年度は、「ASD者のもつ他者の就職活動・就労経験に関する情報ニーズ」を明らかにするため、高等教育機関在籍中の学生、就労移行支援や自立支援(生活訓練)の利用者を対象にアンケート調査を実施した。なお、ASD者には他の障害を重複する者が多い実情と、ASD者と他の発達障害のある者の比較検討の可能性を踏まえ、対象をASD者だけでなく他の発達障害をもつ者にも拡大した。 アンケート調査では、同じ障害をもつ他者の就労に関する経験談(就職活動の様子や、就職後の社会生活)について、見聞きした経験の有無と方法、見聞きした経験談の内容、経験談を見聞きしたことが自分自身に与えた影響や感想、他者の経験談から得たい情報等について、計176名から回答を得た。 アンケートの結果、他者の経験談を見聞きする機会は対面でのやり取り以外にも、SNSや当事者のブログ、テレビ番組など多様であることが示された。また他者の経験談を見聞きする機会は、障害者雇用での働き方など就職活動に関する情報収集のために機能するとともに、自己の就労に向けた前向きな気持ちの高まりに作用すること等も示された。他者の経験談から得たい情報としては、障害者雇用に関する内容、障害理解を含む自己理解に関する内容等があげられた。さらに回答者の多くが「他者の就労経験について知りたい」と回答しており、就労支援における「他者の経験を聞く」活動のニーズの高さが再提示された。一方、他者の経験談を聞くことで就労への不安が高まる場合もあり、この点はこのような活動を適切に支援に組み込むために対応すべき課題であると考えられた。 2021年度のアンケート調査で得られた結果については、2022年度に学会発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に目標としていた、就労支援を受けるASD者を含む発達障害者のもつ他者の就職活動・就労経験に関する情報ニーズについて、アンケート調査から示すことができた。また当事者の目線で有益な情報を提供し合える「経験を聞く・語る場」の提案に向け、他者の就労経験を見聞きしたことが自己に与える影響についても示すことができ、当初の計画通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、ASDを含む発達障害者が互いの経験を「聞く・語る」場として支援機関内で提供される、「先輩の経験談を聞くイベント」の登壇者と参加者双方を対象とした研究を実施する。 登壇者に対しては、自己の経験を語ることが自己理解や登壇後の社会生活、就労に対する自己効力感に与える影響について、インタビュー調査を中心に検討する予定である。参加者に対しては、イベントに登壇する「先輩」の経験談が、自己の就労に関する意識や行動に与える影響について、アンケート調査を中心に検討する予定である。 本研究課題全体を通し、多くの支援機関で提供可能性のある当事者同士の経験の共有を通した支援について、経験を聞く側、語る側双方への支援上の意義を明らかにするとともに、支援提供における留意点を明らかにする。また2021年度の研究結果や近年の多様なオンライン・ICTツールの普及を踏まえ、対面による座談会形式以外の方法を用いた経験共有の場の提供についても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に実施したアンケート調査の対象者について、発達障害の医学的診断、または医学的診断はないが心理検査等の根拠資料に基づき発達障害の傾向があると認められる者に限定した結果、特に高等教育機関に在籍する学生の回答者が当初の想定人数を大きく下回った。そのため、謝金の支払いが当初予算を下回った。また、購入を予定していたノートパソコン等の機器についても当初計画より安価で希望の性能のものを購入することができた。 2022年度計画には、「当事者が互いの経験を聞く・語る」イベントの登壇者を対象としたインタビュー調査が含まれる。次年度使用額を踏まえた助成金は、主に質的分析に向けたインタビュー内容の文字起こしの業者委託や、インタビュー協力者への謝金、イベント内容の録画のための機器購入等に充てる計画である。また、本研究課題の成果発表を予定している学会が現状では対面にて開催される見通しであり、発表費及び旅費としても使用する予定である。
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