本研究の目的は、中国の一少数民族である中国朝鮮族の現代移民を事例に、移民とホームランド関係・移民がホームランドを維持するにあたって何が影響を与えるのかを解明することである。 本研究は、日本、韓国、中国という3つの国における中国朝鮮族を対象に、ホームランド意識、ホームランドとの実際のかかわり方、近年の中国の少数民族政策と農村政策の変化及び新型コロナウイルス感染拡大による影響を考察する。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大及びオミクロン株の出現により移動が制限されたため当初の計画を見直し、1年目は資料収集とインタネットインタビューを、2年目は夏に日本国内、冬に韓国における中国朝鮮族に対する調査を行った。 2023年度は、ようやく本格的な中国の調査が可能になり、夏と冬2回にわたって中国に対する調査を行うことができた。詳しくは以下のとおりである。8月27日から30日間、延辺の二つの都会の変化についてフィールド調査、三つの農村に対するフィールドワークおよび聞き取り調査を行った。2月16日から25日間、延辺の2つの市の観光地域で参与観察、2つの農村でフィールドワークおよび3人に対する聞き取り調査を行った。2回の調査とも主に移民の生活状況、故郷との関係、新型コロナウイルス感染拡大の影響について調べたが、冬の調査では延辺の観光化現象(夏調査で収集した情報をもとに)についても調べた。2回の中国調査では、移民と送り出しホームランドの間で存在する様々な関係性を深く探ることができた。とくに家族・親族などの親密圏とは異なる関係性に注目し、哲学論集第70号に論文として投稿し2024年2月に掲載された。また、調査で気づいた移民送り出し地域が観光地化する現象についても第97回日本社会学会大会で報告予定である。
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