本研究は、沖縄の軍用地問題を定住者と移民者両方の視点から追究する点において、従来の沖縄に関わる移民史や地域史、土地闘争史、民衆史を架橋するものである。例えば、地域史では、地域から離れた人びとの歴史は残りにくく、一方で移民史では移住地に焦点を当てた研究が比較的多い。本研究では、軍用地問題に抵抗する土地闘争という、沖縄戦後史研究においてメジャーな課題を扱いながらも、従来の研究では分野ごとに分かれていた歴史的事実を、人びとのライフヒストリーを通して繋ぐことで民衆史を深化させたといえるだろう。さらに、上記の課題は、研究の領域のみならず沖縄社会も大きな関心を持つものであり、社会的意義も持つものである。
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