これまでの「日韓併合」に関する研究は、「日韓併合」に至るまでの過程に議論が集中し、その後の長い支配と解放後の意味づけやインパクトにはあまり言及してこなかった。現在の日韓関係における植民地支配の記憶をめぐる論争は、「反日」「親日」の間にあったグレーゾーンを忘却する形で展開され、日韓それぞれのナショナリズムの責任を抱きしめることができないでいる。日韓がこの問題をめぐって対立ではなく、対話していくには、相手に対する責任のなすりつけではなく、主体的な責任に基づいた自省が求められており、本研究は、そうした論点を盛んな想起の中で忘却された「日韓併合」の記念の在り方から提示した。
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