本研究は、令和3年度に引き続き、(1)刑務所出所者等に対する就労支援の制度・実態を多角的・総合的に検証することにより、刑事司法領域の就労支援の現状と課題及びその背景要因を明らかにし、有効な支援・課題解決アプローチを提示すること、(2)分析で得られた知見をもとに、刑事司法領域の就労支援の実践への示唆及び政策提言を行うことを目的としている。 令和4年度の研究内容は次の通りである。まず、令和3年度から実施しているインタビュー調査では、令和4年度は更生保護就労支援事業の受託団体職員8人、保護観察官1人を対象に実施した。そして、インタビュー調査結果を踏まえ、令和4年度に更生保護就労支援事業を受託している全国25か所の受託団体の所長(25人)及び職員(50人)を対象に質問紙調査を実施した。これらの成果として、日本更生保護学会第11回大会において「更生保護における就労支援の現状と課題」の報告発表を行った。 本研究期間全体を通じて、まず、更生保護就労支援事業の受託団体職員を対象とした質的調査から更生保護就労支援事業の実施を通して関係団体・協力雇用主との連携等への影響、日頃から対象者や協力雇用主への支援及び関係団体との連携等で意識していること、そして、就職活動支援及び職場定着支援を通して習得した支援ノウハウの一端を明らかにすることができた。また、保護観察所の保護観察官、更生保護施設職員を対象とした刑務所出所者等の就労支援に特化した意識調査から、実践現場から見た刑務所出所者等の就労の課題と支援について明らかにすることができた。なお、更生保護就労支援事業の受託団体職員を対象とした質問紙調査から、対象者の特性に起因する支援の難しさ及び工夫・ポイント、協力雇用主に関連する課題及び支援の工夫・ポイント、現場における支援困難(課題)を軽減する支援の工夫・ポイントの一端を明らかにすることができた。
|