研究課題
本研究の目的は、日本における国際バカロレア(International Baccalaureate: IB)の初等教育プログラム(Primary Years Programme: PYP)の受容実態を実証的に解明することである。本研究では、学校教育法第1条に規定される学校(1条校)で展開される日本の伝統的な教育とIB教育の関連を弁証法的に検討し、「日本型IB教育の在り方」について示唆を得て、「教育現場へ還元可能な実践モデルの導出」に貢献することを試みる。本年度はまず、小学校学習指導要領(平成29年告示)とPYPの教育カリキュラムの枠組みを比較・検討し、各カリキュラムをめぐる課題として、特に具体的な授業実践場面での教育方法について考察した。その結果、1条校におけるIB教育の方法論と課題が析出された。次に、日本でのPYPの地域化(localization)の実態について検討した。PYP導入が日本の小学校教育にどのような影響を与えるかについての示唆を導出するために、1条校のPYP認定小学校の教育理念、ないし教育目標を整理した。その結果、「世界規模での貢献や育成」というIB的主題が、日本的な教育理念である「教育を通じた社会の形成」「自己のスキルの向上」の二つの柱と合わさることで、1条校のIB教育として地域化されていることが明らかになった。最後に、効果的な教員研修について検討するために、1条校のPYP認定小学校で実施されている校内教員研修を対象に事例検討を行った。その結果、話し合い学習による対話型の教師教育の活用の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、IBPYP教育の受容過程をを「カリキュラム形成」、「授業展開」、「教員研修」の3つの視点から調査、分析をする計画であり、本年度はそれらを実証的に明らかにするための予備的考察を行うことができたため。
今後は、PYP教員とPYP児童ないし保護者へのインタビュー調査を実施することを計画している。そして、その質的データを中核に据え、教育現場に還元可能な日本型IB教育モデルの構築のための議論を深めていく。そのことを通して、各PYP校において、どこに阻害要因があるのか、いかに解決するのか、という課題を整理していきながら全体的な構造の中で弁証法的に日本の教育とIB教育を高めていける教育モデルを構築する。
新型コロナウイルス感染拡大状況に鑑み、現地調査の実施に支障を来した。そのため次年度以降に調査の一部を延期することとした。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
星槎大学大学院紀要
巻: 3(1) ページ: 61-66