研究課題/領域番号 |
21K20216
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
青木 拓巳 宮城学院女子大学, 教育学部, 助教 (90909813)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 子ども / 睡眠 / 運動 / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
思春期小児の睡眠問題を解決し得る手段のひとつとして,身体活動の実施が挙げられる.研究代表者らは,思春期小児の豊富な身体活動量が,良好な睡眠と関係することを明らかにしてきた.一方で,道路騒音や治安の悪さが睡眠の質を低下させることや,居住地域の歩きやすさと豊富な身体活動量が関係していることが報告されている.すなわち,地理・社会環境は人々の睡眠や身体活動に影響を及ぼしている.以上のことから,思春期小児の睡眠と身体活動の関係性を詳細に検証するためには,地理・社会環境を踏まえた分析が必要である.本研究は,「地理・社会環境を考慮した思春期小児の睡眠と身体活動の関係性を明らかにすること」そして「地理・社会環境を考慮した思春期小児の睡眠に対する身体活動ガイドラインの開発」を目的に実施している. 当該年度は先ず,地理・社会環境を変数に投入しない状態で決定木分析を実施した.決定木分析とは,分析に投入した説明変数の値によって,集団内の目的変数の分布がより均一な傾向を有する集団へ分割することを繰り返す手法である.目的変数を各種の睡眠変数(日中の眠気,ソーシャルジェットラグ,夜間睡眠の質)に,説明変数を校種,性別,1日あたりの中高強度身体活動(MVPA)時間,そして1日あたりの歩行時間とした決定木分析を実施し,各種の睡眠変数が最も良好となる集団における身体活動強度・時間パターンを探索的に解明した.その結果,日中の眠気およびソーシャルジェットラグについては,校種や性別のカテゴリ別に,それぞれMVPAや歩数による至適な時間帯が算出された.一方で,夜間睡眠の質に関しては校種や性別によってのみ集団の分岐が進行し,身体活動の変数による分岐は確認されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が保有する全国各地の約20,000名の児童・生徒の睡眠や身体活動,生活習慣のデータを使用して分析を実施した.各種の睡眠変数を目的変数にした決定木分析の結果,日中の眠気やソーシャルジェットラグに関しては至適な身体活動強度・時間パターンが得られたが,夜間睡眠の質に関しては身体活動による分類が進行しなかった.すなわち,目的変数に投入した睡眠変数に応じて得られるモデルが大きく異なっていた.当該年度は,地理・社会環境変数を投入する前段階のモデル構築および検証を主として実施した.
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今後の研究の推進方策 |
地理・社会環境に関する変数を新たに投入し,これまでに構築したモデルがどのように変化するのかを解明する必要がある.また,当該年度の分析結果を考え合わせると,どの睡眠変数を使用するかによって得られるモデルが大きく変わることが十分に想定される.思春期小児の睡眠に対する身体活動ガイドラインは,単一のものではなく睡眠変数に応じた複数のガイドラインを提示する必要があるだろう.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度分として計上していた分析用PCが,納期の大幅な遅れによって次年度に持ち越しとなった.また,地理・社会環境に関する変数を入手するために計上していた予算についても,変数の取捨選択をより正確に実施するために次年度に持ち越すこととなった.以上の理由により,次年度使用額が発生している.次年度は,分析用PCを購入して地理・社会環境変数を入手したうえで,各種の分析を実施予定である.また,学会発表や論文投稿に関する経費も計上している.
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