本研究では,通常学級に在籍する特別な支援が必要な子どもへの援助について,学級集団の状態に応じたソーシャルスキル教育のあり方について検討することを目的としていた。この目的を達成するために,最終年度では,初年度の研究成果をもとに,学級集団の状態に応じたソーシャルスキル教育の仮説モデルを作成し,仮説モデルに基づいた介入と臨床的妥当性について検討を行った。 初年度に整理中であった学級担任教師の聞き取り調査結果を整理した結果,学級集団の状態ごとに,学級内での特別な支援が必要な子どもとその他の子どもとのかかわりの様子や担任教師の学級経営方針等の特徴的な傾向が明らかになった。 初年度の調査の分析結果で明らかになった,代表的な学級集団の状態ごとの学級適応およびソーシャルスキルの特徴と学級担任教師の聞き取り調査結果を統合して,代表的な学級集団の状態ごとのソーシャルスキル教育の展開について,ターゲットスキルの配列や,具体的な実施方法(全体指導,個別指導のバランスや展開の工夫等)を整理した仮説モデルを作成した。 仮説モデルの効果を検証するために,4つの代表的な学級集団の状態に該当する学級への介入による効果検証を行った。介入前と介入後の学級適応およびソーシャルスキルに関連する変数についての調査結果の分析および担任教師への聞き取り調査の結果から,仮説モデルに基づく介入により,特別な支援が必要な子ども,その他の子どもそれぞれに一定の介入効果が認められた。一方で,学級集団の状態によっては,十分な介入効果が認められなかった学級も一部存在した。このことについて,さらなる要因等の検討が必要となるだろう。 本研究においては,介入研究は2学期に限定された。しかし,学級集団は最低1~2年は同一メンバーが学習と生活を共にする場であることを考慮すると,年間のプログラムを検討し,効果を検証することも必要になるだろう。
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