海外で使用されている視覚的注意および眼球運動検査であるDevelopmental Eye Movement Test(DEM)と眼球運動測定装置Tobii Pro Spectrum、読みの流暢性と正確性を測定する特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドラインを使用し、小学4~6年生の日本人小児において視覚情報処理と読み能力との関連について検討を行った。定型発達児13例、読みに困難さを認める発達性読み書き障害(ディスレクシア)35例に検査を実施し、分析を行った。発達性読み書き障害児ではDEMにおける視覚情報処理への負荷が高いテストCの成績低下がみられ、Tobiiにおける眼球運動の特性として固視の時間が長かった。読み能力とDEMの成績およびTobiiによる固視時間に統計的に有意な相関がみられた。本結果は発達性読み書き障害児には視覚情報処理の障害がみられ、視覚的注意などの視覚情報処理能力が読みに影響する可能性を示唆した。また、縦書きと横書きのDEMを作成し、視覚情報処理と眼球運動を測定したところ、横書きの文字列において衝動性眼球運動の回数が少なく、視覚情報処理も速く行うことができていた。この結果は、定型発達児および発達性読み書き障害児において横読みにおいて負担が少なく読める可能性を示唆した。一方で、DEMやTobiiの結果は、個人差も大きいため、一般論で対応するのではなく、個々の視覚情報処理や読みの特性を捉えた上で支援を検討する必要がある。
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