研究課題/領域番号 |
21K20227
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研究機関 | 北海道武蔵女子短期大学 |
研究代表者 |
奴久妻 駿介 北海道武蔵女子短期大学, その他部局等, 講師 (50911187)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 外国人児童生徒 / 多文化主義 / 日本語教室 / 不就学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国と自治体の外国人児童生徒の教育に関する議論をテキスト分析を通し、マクロなアクターの多文化主義の方向性を明らかにし、その結果が、不就学者を含む外国人児童生徒の受け入れ経験のある地域の日本語教室の認識とどのように関連しているかを、多文化主義の理論枠組み(kymlicka, 2002=2005)を基に明らかにすることである。 研究実績として、第一に、2014年調査済みの不就学の外国人児童生徒の受け入れ経験のある15箇所の日本語教室スタッフを対象に、(1) 2014年段階の過去のデータを整理し、(2) それらの教室13箇所へ新たに2022年のアンケートによる追跡調査を実施した。内容としては、2014年から2021年の間における、新規の不就学児童生徒の受け入れの有無と、外国人児童生徒に関連する諸課題への認識についてであり、それらの予備調査を完了した。結果、外国人散在地域内の日本語教室2箇所のスタッフから情報を得ることができた。質的データの総合的な分析・考察は今後の課題である。第二に、理論枠組みの設定としては、ウィル・キムリッカ(kymlicka, 2002=2005)等の知見を援用し、「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」及び「外国人集住都市会議」のデータを、KH Coderを用いてテキスト分析した。結果、いずれの会議でも、決して母語教育が無視されている訳ではなかったが、日本語教育が議論の前提事項として捉えられているケースが多く見られた。すなわち、日本の地域共同体への外国人児童生徒の参加を念頭に置いた議論が多く展開していた。 今後の課題は、以上の予備調査をベースに、2014年と2022年に得られたデータと国や自治体の会議における多文化主義をベースとした分析から示された結果を、ローカルな視点(現場の認識)における多文化主義と繋げて考察していくことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗状況について、第一に、(1) 過去のデータ整理として、2014年段階の不就学者受け入れ経験のある15箇所の地域の日本語教室からすでに得ているデータを表にまとめた。その内、関東圏の日本語教室2箇所から得た質的データを参考に、外国人児童生徒を取り巻く日常的な環境によって、児童生徒の不就学状況が継続する事例と、草の根のサポートによって就学に繋がった事例の文字データに対してコーディングを行った。次に、(2) 2022年4月に実施したアンケート調査の結果、外国人散在地域にある2箇所の日本語教室スタッフから具体的な回答を得られた。いずれも2014年から2021年の間に不就学児童生徒の受け入れを行ってはいなかったが(その内1箇所では、就学状況が不明な児童生徒がいた)、その間同教室に在籍していた児童生徒の情報提供や、教室内での外国人児童生徒の教育に関する教室スタッフの認識を知ることができた。しかしながら、2022年現在、子どもの受け入れを行っていない教室や、コロナ禍によって閉鎖中の教室も存在する等、調査遂行上の課題は山積しており、予定よりもデータ収集量が少ない状況である。そのため随時、調査対象となりそうな教室を可能な限り追加していくことを考えている。 第二に、国および自治体と多文化主義の関係性については、「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」や「外国人集住都市会議」を参考に、多文化主義による思想的枠組み(kymlicka, 2002=2005; Taylor, 1993 ; Walzer, 1994=1996)を援用した分析を試みる事ができた。予備調査としてのマクロな分析の進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、アンケート調査で得られたデータを基に、2022年の夏ごろ、外国人散在地域の日本語教室スタッフを対象としたインタビュー調査へ向かう予定である。また、データ分析のために、調査対象となる教室を更に増やす必要があるため、新たな教室へのコンタクトを試みることを検討している。追加した質的データを、既存のデータと合わせてコーディングを行い、すでに実施した国と自治体の議事録分析との比較及び考察を行っていく予定である。その考察を行う際は、再度、多文化主義の理論枠組みの精緻化することを計画している。それらから得られた結果を用いて、学会報告および論文執筆を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催となり、旅費が発生しなかったことから、次年度使用額が生じた。それらの金額を、来年度において、英語論文の校閲料の一部に充てる予定である。
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