研究実績の概要 |
本研究の全体を通したテーマは、国と自治体、そして不就学者を含む外国人児童生徒の受け入れ経験のある日本語教室それぞれの認識と役割を、多文化主義の理論枠組みから明らかにすることである。 最終年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 第一に、2022年10月15日に開催された多文化関係学会第21回年次大会での口頭発表(オンライン)である。ここでは、「日本国内の外国人児童生徒の社会構成的文化に関する一考察─国・自治体と地域日本語教室の対比から─」というタイトルで発表をし、その狙いを、外国人集住都市会議のテキスト分析及び、不就学の外国人児童生徒に関わった経験を持つ日本語ボランティア教室への質的調査を基に、複数の草の根の組織ごとの意識の違いに視点を向け、多文化主義の理論(Kymlicka, W.の批判した『「構成的」なきずな』)からその特徴を描き出すこととした。過去に調査を実施した分として、2教室に対する質的調査内容(関東圏のA教室及びB教室へのメールおよび対面でのインタビュー)を整理し、更に新たに今回、外国人散在地域のC教室およびD教室にメールでの聞き取り調査を行った。結果、国や自治体が日本の共同体への包摂という『「構成的」なきずな』寄りの意見交換をしてきた一方で、その『「構成的」なきずな』の実現性は、地域日本語教室の関わり方に大きく左右されている面があることが明らかとなった。 第二に、外国人散在地域Eにある、市、夜間中学、日本語ボランティア教室、外国人学校それぞれのアクターの外国人児童生徒の教育に対する役割を、Kymlicka, W.とBarry,B.の多文化主義を巡る論争から考察を行った。その研究成果は、2023年5月現在、海外ジャーナルに投稿中である。 最後に、2022年8月26日に実施した外国人散在地域での調査内容については、今後、論文として発表をしていく予定である。
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