研究課題/領域番号 |
21K20236
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
日下 智志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (00909591)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 内発的発展 / 算数・数学カリキュラム開発 / 教育借用 / ローカルナレッジ |
研究実績の概要 |
多くの開発途上国が、 SDGsゴール4で謳われている教育の質の向上に向け、カリキュラム改革に取り組んでいる。しかしながら、特に算数・数学教育では、 学習内容の普遍性を理由に、自国の社会文化的状況を考慮せず、世界の潮流をただ模倣する改訂がなされ、それらが機能しないという状況が起こっている。本研究の目的は、開発途上国の算数・数学カリキュラム開発において、適切な内発的発展を促進するための鍵となる要素を抽出し、内発的発展のプロセスを理論化することである。 この研究課題に対し、モザンビーク共和国を事例として研究を進めている。まず、各学校が独自で開発するローカルカリキュラムについて調査を行い、課題及び今後の可能性について分析した。コロナ禍のため現地渡航が叶わず、直接調査することはできなかったが、現地調査員を雇用し、Zoomを使用して遠隔で、教育省のローカルカリキュラムの担当者及び現場の教員へのインタビュー調査および授業観察を実施した。その結果、ローカルカリキュラムの重要性に関する教員の意識と実施状況の乖離が明らかとなった。その原因が、数学の普遍性及びローカル性に関する理解不足により、教材開発がなされていないことによるものであると推察された。 次に、モザンビークの2021年の初等数学カリキュラム改訂過程を調査した。改訂内容を整理し、カリキュラム改訂に係る会議の議事録から、議論の内容及びその基となる資料を分析した。さらに、カリキュラム改訂に関わったメンバーに、Zoomを使用して遠隔でインタビューを実施した。その結果、カリキュラム開発の適切な内発的発展を促進させるための鍵となる要素として、カリキュラム改訂に関わる技官の「教科内容に関する知識」、「教員・子どもおよび教育現場の理解」、「適切なデータの活用」という3つが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように本年度は、モザンビークのローカルカリキュラムの実践および初等算数数学カリキュラム改訂過程の分析を進めた。その結果、カリキュラム開発の適切な内発的発展を促進する要素に関する示唆を得ることができた。その結果を国際開発学会第32回全国大会(2021年10月20日)で発表した。さらに、分析結果を論文としてまとめ、国際開発学会学会誌「国際開発研究」に現在投稿中である。また、次年度には、日本比較教育学会第58回大会での研究発表を予定している(2022年6月予定)。このことからも本科研の現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抽出された適切な内発的発展を促進する要素から、内発的発展のプロセスを理論化することが求められる。令和3年度は現場でデータを採取し、その検討が中心であったことから,次年度はその結果をこれまでの先行研究を基にした分析を進め、考察を深めたい。また,数学カリキュラム開発の内発的発展に関する国内外研究者との議論を継続して行い、国際学会での発表も視野に入れて研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた現地調査が、コロナ禍のため実現できなかったため、次年度使用額が生じた。
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