研究課題/領域番号 |
21K20238
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山本 弥生 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (30909148)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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キーワード | カテゴリー知覚 / 範疇化成績 / 時間分解能 / 語音聴取 |
研究実績の概要 |
VOT識別課題を高齢者に継続して実施した。VOTは、時間分解能課題の1つでもあるギャップ検出閾値課題などに比し、わずかな聴力低下の影響をも受けやすい結果であった。またVOT識別課題の範疇化成績は、雑音下での聴取成績とも相関を認めている。この結果については学会誌に投稿し、論文として公表することができた。 一方で、実生活上での聞き取りにくさにを質問紙にて調査したところ、雑音下聴取成績と主観的な聞き取りにくさに相関は認めなかった。つまり範疇化成績は必ずしも本人の聞こえの主観と一致していない。加齢による聞こえにくさは、聴力低下によるものだけでなく、注意機能や記憶などの認知機能の関与も大きいと言われている。範疇化成績のような時間分解能は蝸牛レベルでの末梢聴覚の問題に加え、認知機能の影響も受けやすい事が知られている。元来雑音下での聞き取りには、特に注意機能の関与が大きいことが知られている。つまりVOT識別課題の範疇化成績においても、注意機能との関与がある可能性が考えられる。しかしこの点については今回明らかに出来ておらず、今後十分な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者のデータ収集が進んでおり、一定数のデータを得ることができた。これにより範疇化成績と語音聴取能の関係が一部明らかとなった。またこの結果については、学会誌に投稿し論文として報告することが出来た。 その一方で、高齢者の聞き取りには聴力の問題以外にも様々な要因の関与があり、これら複合的な要因が交絡することによって、対象者の聞こえにくさに影響を及ぼしている可能性が高い。VOT識別(カテゴリー知覚)に代表される時間分解能が、聴力以外の要因と実際にどのように関係しているかについては、今後調査を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
時間分解能課題の中には、VOT識別課題やギャップ検出閾値課題など、複数のテストが存在する。音の持つ時間的変化を敏感に感じ取れることは、ことばの聞き取りとも関係すると従来言われているが、時間分解能課題がそれぞれ聴取の何を捉えるかは明らかでない。今回、範疇化成績は雑音下聴取との関与がみられたが、カクテルパーティー効果で知られているように、雑音下での聴取には注意機能などの影響があると言われている。注意機能などの認知の側面が、時間分解能とどうのように関係するかについて、明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、昨年度までに検討することができなかった、注意機能と時間分機能の関係について調査を継続している。最終年度の1年をかけて追加でのデータ収集、および海外の学会誌への英語論文投稿のため、準備をしている段階である。注意機能と時間分解能の関係についてさらに検討をすすめ、結果を報告したい。
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