本研究は、幼児期における絵本を通じた人間形成について、マーサ・C・ヌスバウムの「物語的想像力(narrative imagination)」の思想から理論的な基礎付けを目指したものである。これまで絵本による想像力の涵養などの個人の能力は、個人の内だけで論じられる傾向にあった。対して、本研究では「物語的想像力」の概念から検討することにより、絵本における人間形成はグローバル社会における「人間の尊厳」の保障や社会正義の実現につながるという、個人が生きる社会や共同体への広い視点をもつ特質を浮き彫りにした。絵本が子どもの「物語的想像力」を育むことを通して世界市民の一員へと誘うことを示唆できた。
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