軽度知的障害者の場合,健常者との境界域であるため「障害理解」が課題となってくる。また,支援ニーズの多様性・複雑さへの対応が難しくなっている。 特に,小中学校の通常学級を経由している者が多く,障害受容の難しさや様々な学校不適応などが課題とされている。一方で,明確な指導法は不十分であり,児童・生徒の自己に対するアセスメントツールは見当たらない。さらに,特別支援学校の高等部では自己理解が進み,安定した進路模索ができるものの,小中学生の時期は自身の特性と周囲からの期待が大きくずれるため,安定した自己理解が形成しにくい。そのため,小中学生の時期における知的障害や発達障害のある生徒の適切な自己理解の支援が求められる。 そこで本研究は,特別支援教育の対象である知的障害や発達障害のある児童生徒の自己理解支援のためのニーズと指導形態を調査・分析し,事例を通してのタイプごとの支援方法を検討した。その結果,児童生徒の自己に関する実態把握のために,ツールを用いている支援者は多いものの,SSTや感情に関するツールが多く使用されており,今後の自己理解支援において多層性と客観性を検討した上で新たなツールの検討が求められた。 また,児童生徒の特性から支援ニーズの把握した結果,特に全般的につまずきのある場合と情緒不安定や行動コントロールが苦手である場合,進路や進学,将来に関する不安があることが明らかになり,通級による指導において生徒本人に進路や将来に向けての見通しを持たせることや,中学校入学前から児童の課題を把握して特別支援教室での指導を小学校から引き継ぐなど,将来を見込んだ指導をする必要性が示唆された。
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